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めざめノ歌・III ページ12

ミューノがハルトの呑気なその反応を見て、
目を伏せ、ハルトの寝ているベッドに線を描くように人差し指でなぞりながら、ぽつぽつと喋り出した。

「兄者、腕や足が生え変わるくらいには時間が経ったんだよ。」


妹の声は震えていた。

まだ具合がよくないのか、視界が若干歪んでいる。

「兄者より....お兄ちゃんより後に運ばれてきた人達もみんな目が覚めて」

「それで、ここの病室で眠ってるのもお兄ちゃんだけになっちゃうし」



「いい加減起きてほしいからうるさくしたのに全然起きないし、」


ミューノが堰を切ったように喋り出した。
どうやら彼女の中で何かが決壊したようである。

俯いてはいるが、彼女の顔からはぽたぽたと雫が滴っていた。

「ミューノ、泣かないでよ」
「泣いてないもん。先に泣いたのはお兄ちゃんだもん、ひっぐ、これはただのもらい泣きだもん」

屁理屈を並べつつ、肩を震わせて泣くミューノがハルトの顔を指差した。
ハルトが自分の頰をさすってみると、暖かいものが手に触れる。
涙であった。

先刻に感じた、つんとした感覚と視界が歪みの原因が自らの涙であったと気がつくのに、ハルトは随分骨を折った。

「お兄ちゃんの言葉、私、ずっと信じてたんだ。“俺たちは不死身だから、なんとかなる”って」

根拠のない鼓吹は何より虚しい。

彼女の不安感はハルトにとって、察するにありあまるものであった。





ミューノはただただ嗚咽を漏らしながら泣いていた。
ハルトは、声を出して泣くのが性に合わなかったため、ひたすら静かにすすり泣いた。


____ポラーノの広場の一角、その病室には、確かに、泣き声をあげる小さな兄妹がいた。

※めざめノ歌・IV→←めざめノ歌・III



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作者名:冬目 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2017年10月17日 1時

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