皐月 六 ページ7
「りん、おはよ」
下駄箱で靴を履き替えていると
私の親友である初野雪の声が響いた。
彼女の声は雪のように透明でありながら
春の木漏れ日のように暖かい、不思議な感じがした。
私の嫌な気持ちも
そっと覆いかぶせてくれるから
彼女の前では上手に笑える。
「おはよう雪、郡山君も」
そう言って私は雪の隣にいる
長身の優男にも挨拶をする。
彼は雪の幼馴染の郡山冬樹
雪は郡山君が好きで郡山君もきっと雪が好きだ。
お互いを想い合う、理想の幼馴染のような二人。
それはまるで、神様が決めた脚本の
登場人物のような二人だった。
羨ましかった。
幼馴染で両思いでいられる二人が。
「毎朝、一緒に登校とは見せつけてくれるわね。
あー、お熱いお熱い。私は先に行くわね」
「ちょっ…りん!違うってば!!」
「な、なに言ってんだよ春野!」
二人同時に顔を赤らめて必死になる。
このお似合いの二人に茶化しをいれるのも
私の日々のルーチンワークの一つだ。
というよりこの二人は毎日言っているのだから
そろそろ慣れてほしい。
(ほんと、どこの恋愛小説からやってきたのかしら)
そんなことを思いながら私は教室の扉を開いて席に着く。
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作者名:ゆうな | 作成日時:2017年2月28日 2時