男女 ページ41
【Noside】
「じゃが、わっちはぬしと幸せになりたいと思っておる。」
そう言った瞬間後ろにある黒い肩が跳ねた。縁側に腰掛ける1人の女にポツリポツリと滴る水が落ちる。濡れる着物を気にもせず静止したままでいる。遥か上の灰色は何もかも隠すように広がり続けていく。
例え、今遠くで誰かが独り言を言ったとしても気が付く程の静寂が2人の間に留まっている。
「ぬしが望む幸せはわっちにとっての幸せだと思っておる。」
静寂を切り裂いたのは又もや女の方だった。
桃色の瞳ははどこか緊張しているような、少し不安がっているような。不安定な色を持っていた。男の赤い瞳は驚いた様な嬉しそうな様な色を持っていた。
そんな2つの瞳は交わることなく時が流れる。カチカチと規則的な秒針の音がやけに大きく聞こえている。2つの心音は少しずつ大きく、早まっていく。
ふと女の方が動いた。立ち上がり、自身が濡れるのも気にせずに屋根のない所へと歩き出した。案の定、水を滴らせる髪は重そうに体に張り付き、体温を奪っていった。
立ち止まると睫毛に乗った雨が重いかのように瞼を閉じた。地面を睨み、躊躇うようにして少しずつ顔をあげて行った。
暫く灰色の大きなキャンバスを見つめてから呟いた。
.
「月が綺麗じゃな」
不思議と雨音に掻き消されることなく男の耳へと届いていた。男はゆっくりと歩き出して縁側へと立った。少しも止まることなく降り続ける雨を迷惑そうに見つめ、女と同じように呟いた。
.
「死んでもいいでさァ」
その一言により、今まで1度も男の顔を見ようともしなかった女が振り向いた。辺りには水しぶきが舞う。よろめきながら男の元へと向かう。男はタオルで女に付着した水分を取ろうとしている。
切り取られたその瞬間は、ただの幼馴染でも、知り合いでも無くなった時であった。
その顔はどちらも幸せそうな笑みを浮かべていた。満足気で、楽しそうだった。
華麗に舞う蝶
と
剣を振るうサディスト
一見相容れない2人は
遠く離れて
届かなくなって
迷って
悩んで
すれ違って
合わさった
そして、もう二度と離れることは無い。
66人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます!自己満足だった小説を読んで頂いて、こうやって褒めて頂いて、嬉しいという言葉じゃ足りない位です!更新がなかなか出来なくてごめんなさい!精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年1月13日 13時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - もうこの小説大好きです!シリアスさの中に恋愛要素って...技術が素晴らしすぎると思いました!情景描写も心理描写も端的で分かりやすく、人間味溢れる銀魂っぽくて素敵です!もうこの小説好きすぎる...!頑張って下さい! (2019年1月12日 17時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ヒジキさん» ありがとうございます!そういって貰えて嬉しいです!! (2018年8月2日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
ヒジキ(プロフ) - 面白いです!!これからも頑張ってください! (2018年8月2日 1時) (レス) id: 127c0c77c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako__uranai
作成日時:2018年7月18日 13時