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もし ページ34

【総悟side】

「安心すると思ったらこういうことでしたかィ。」
俺の肩に顔を埋めたAの背中に手を回して寝ていた俺は溢れるように思った事を口にしていた。
────安心する。
それは、実際にAが一緒に居て安心できる幼馴染(・・・)だからというやつか。
…………いや、そんなんじゃねぇな。
Aが近くにいるから。ただそんだけの理由だろう。もう離れて行かねぇ様に俺が止められる。ただ、そんだけだ。
俺はAが俺の近くから消えて行っちまうのを恐れていた。だから、こうやって抱き締めて寝てた。
何故、俺がAが居なくなるのを恐れているかなんて考える迄も無かった。


俺がAに惚れちまったから。


俺のこんな心情なんて、知ったこっちゃねぇようなすやすやと眠りこけるAになのか。それとも俺をここに来させた近藤さんか。またまた、違う誰かなのか。
……そんなこと分かりゃしねぇが。俺はAを見つめながら呟いた。

「俺に自覚させねェで下せェ。」

その短い一言のものの何秒後か。Aがいきなり目覚めた。起きたなら、このままの体制で居られる口実も無くなり、腕を緩めた。
するりと俺の腕から抜け、目覚めた時と同じ様に勢いよく立ち上がったAはそそくさと支度を始めた。

「わ、わっちはこの後仕事がありんす!」
目を反らしあからさまに吃りながら言うAに違和感を覚えつつもその通りか、と納得してしまう俺もいた。だから、Aが廊下へと出て行くのを止めはしなかった。





─────もし、俺がこの時Aを呼び止めていたら。


─────もし、俺がAの顔を見ていたら。


─────もし、俺があの時あんな事を言わなければ。




──────Aをあんなに悩ませることも、困らせることも、傷付かせることも無かったのだろう。
Aがもう最後と言っていた涙を俺が見ることにもならなかったはずだ。





俺を昇降口まで送ってくれたAの顔は、何処か寂しげで、何処か辛そうで、何か隠しているような。そんな顔をしていた。

その顔のまま

「ありがとう。」

そう言い放った。

手を降って俺を見送るAの真意に気付く前に、地上へと昇るための昇降機(俺をここから遠ざけるモノ)が来て俺の思考はシャットアウトしたのだった。
だが、そんな状況でも一つ思う事がある。

Aが今にも消えちまいそうだった。

告白→←今は



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きなこ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます!自己満足だった小説を読んで頂いて、こうやって褒めて頂いて、嬉しいという言葉じゃ足りない位です!更新がなかなか出来なくてごめんなさい!精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年1月13日 13時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - もうこの小説大好きです!シリアスさの中に恋愛要素って...技術が素晴らしすぎると思いました!情景描写も心理描写も端的で分かりやすく、人間味溢れる銀魂っぽくて素敵です!もうこの小説好きすぎる...!頑張って下さい! (2019年1月12日 17時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ヒジキさん» ありがとうございます!そういって貰えて嬉しいです!! (2018年8月2日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
ヒジキ(プロフ) - 面白いです!!これからも頑張ってください! (2018年8月2日 1時) (レス) id: 127c0c77c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako__uranai  
作成日時:2018年7月18日 13時

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