検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:29,043 hit

護る ページ26

【Noside】

「そんな中、何が善で、何が悪なのか。分からなくなってきんした。」
今まで、不安そうに揺れていた桃色の瞳が、漸く閉じられた。長い睫毛が彼女の瞳を縁取る。

「わっちらがやっていることは、本当に正しいのか。」
一つ一つの言葉を噛み締めるようにゆっくりと。それは、正真正銘の彼女の言葉だった。

「そんなこと考えたって仕方ないのはわっちも分かっていんした。じゃが、不安で不安で仕方無かった。」
崩れ落ちそうになる足を、溢れ出しそうになる涙を必死に堪え。形のいい唇から言葉を溢す。

「わっちは、吉原を護るため。日輪と月詠を護るため。そう言い聞かせて戦った。」
彼女の刀を握り締める手は震えていた。合っているのかは分からない。でも、護るにはそれしかないと思って。震えを隠し必死に戦った。どれだけ、仲間が傷つけられても吉原の光を護るため。副頭領としての意地を見せていた。決して、部下の前では涙を見せなかった。
「殺すがいい。わっちを。反逆者(頼りないわっち)を。」
彼女の閉じられていた瞳は、いつの間にか大きく開き、固い意志をもっていた。真っ直ぐな瞳をしていた。
「じゃが、吉原の光は護らせてもらう。」
日輪、月詠、銀時、新八、神楽。吉原の光を。吉原に光を導く者を。彼女は護るため己と戦う。

「己が身を挺して賊を護るというのか!」
再びクナイの雨が彼女に降り注ぐ。瞳を閉じることなく弾いた。彼女に傘を差せるものはいなかった。彼女の護ろうとしているものがその攻撃を受けたら。今まで彼女のやっていたことは。全て泡のように弾ける。
だから、雨から逃げるには自分で己を護るしかなかった。


「このくだらない街に護る価値などありんせん。分かっていながらも剣を振るった。多くの人を傷付けた。」
手首にクナイが刺さるのを皮切りに、彼女の体にはクナイが刺さっていった。滴る血が、地面に水溜まりを作っていた。彼女の口からは赤い赤い血が零れた。耐えきれず、崩れ落ちる足。

「わっちが護っていたのは。わっちの望みだけだった。大切な人に死んでほしくない。いなくなってほしくない。それだけだった。」
彼女の顔が艶やかな黒髪で隠れる。血に染まる彼女の着物。あしらわれる桃色の蝶が深紅へと変わる。
「わっちが護っていたのは。常夜の檻だった。鳳仙がための檻。」


「全て言い訳で己を覆い隠し、強いふりをした。気高いふりをした。

…………じゃが、わっちは何も変わってなどいなかった。」

百華→←思い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
66人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 沖田総悟 , 吉原
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

きなこ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます!自己満足だった小説を読んで頂いて、こうやって褒めて頂いて、嬉しいという言葉じゃ足りない位です!更新がなかなか出来なくてごめんなさい!精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年1月13日 13時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - もうこの小説大好きです!シリアスさの中に恋愛要素って...技術が素晴らしすぎると思いました!情景描写も心理描写も端的で分かりやすく、人間味溢れる銀魂っぽくて素敵です!もうこの小説好きすぎる...!頑張って下さい! (2019年1月12日 17時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ヒジキさん» ありがとうございます!そういって貰えて嬉しいです!! (2018年8月2日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
ヒジキ(プロフ) - 面白いです!!これからも頑張ってください! (2018年8月2日 1時) (レス) id: 127c0c77c2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako__uranai  
作成日時:2018年7月18日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。