思い ページ25
【胡蝶side】
こちらに向かう百華に、鳳仙の元へ走る万事屋。そして、真っ直ぐに立つ月詠。私がこの場でやることなんて一つしかなかった。
月詠の前に立って、百華との壁になる。月を護るために犠牲になる覚悟はとっくに固めていた。銀時に死ぬなと言われたけれど、その約束が守れるか分からない。ただ、月詠を護る。その事だけで頭の中を埋めた。
「吉原自警団 百華頭領月詠に傷一つ付けることも許さぬ。ぬしらの相手はわっちで充分じゃ。」
懐から出した短刀を構える。深く息を吸って、吐いて。神経を集中させる。閉じていた目を開いて真っ直ぐに前を見つめる。
「副頭領 胡蝶参る!」
その言葉と同時にまたもや降り注ぐクナイ。短刀で弾くも、そのまま私に当たるものもあった。頬を擦り、太股を刺すクナイは痛かった。でも、生きている。こんな、暗闇の中に閉じ込められていても生きている。護るべき相手がいるなら、私らしく生きていられる。それだけで嬉しかった。
「なぜ……反撃しない。何故黙って打たれるままでいる。」
クナイが止んでも黙って立っているだけの私を見て誰かが言った。
「わっちにぬしらを傷付ける権利はありんせん。」
攻撃が止んだ事を確認する。いつもより鋭い目で、此方を睨む部下。そして、未だに驚いたような顔をする月詠。出来る限り全員の顔を見てから口を開いた。
「今まで、わっちは吉原を護るため、ぬしらと共に掟を犯すもの達を裁いてきんした。」
少しずつ口から溢れ出る言葉。それは、この何年もで積み重なった思いで。緩みそうになる涙腺を必死に押さえる。瞬きをして、気持ちを切り替えて。どんな風に思われてもいいから、身の丈を伝えたい。
感謝を、信頼を。
そして、謝らなくてはならない。
副頭領の器には足りない。私は、副頭領として百華の2番目に立つべき人間じゃない。それなのに慕ってくれた。年下で不甲斐ないこんな私に。
そして、その私が裏切った。皆で護ってきた吉原を、百華を裏切った。決して許される事ではない。
謝って許されるなんてそんな甘いことを考えている訳では無いけれど。感謝を伝えないまま、裏切り者として死んで行くのが一番やってはいけないだと思う。せめて……せめて……
ありがとう
そう、伝えられたら。
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きなこ(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます!自己満足だった小説を読んで頂いて、こうやって褒めて頂いて、嬉しいという言葉じゃ足りない位です!更新がなかなか出来なくてごめんなさい!精一杯頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年1月13日 13時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - もうこの小説大好きです!シリアスさの中に恋愛要素って...技術が素晴らしすぎると思いました!情景描写も心理描写も端的で分かりやすく、人間味溢れる銀魂っぽくて素敵です!もうこの小説好きすぎる...!頑張って下さい! (2019年1月12日 17時) (レス) id: 3ba3df2a95 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - ヒジキさん» ありがとうございます!そういって貰えて嬉しいです!! (2018年8月2日 18時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
ヒジキ(プロフ) - 面白いです!!これからも頑張ってください! (2018年8月2日 1時) (レス) id: 127c0c77c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako__uranai
作成日時:2018年7月18日 13時