中王区百合夢集。

無花果様と、デート。(前編) ページ3

中王区、デパート内にて。


今日はAとのデートだ。

そう、デートなのだが…

今、私 勘解由小路無花果は待ち合わせ場所へ走っている。

無花果(くっ…私とした事が遅刻してしまうとは、非常に不甲斐ない。)

…待ち合わせ場所には、もう既にAがおり、普段以上に可愛らしい洋服を纏っていた。

無花果(…また、惚れ直してしまったな。)

Aがこちらに気付いた様で、愛らしい笑顔で手を振ってくれた。私もAに微笑み、手を振り返す。

無花果「A！…遅れてしまい、本当にすまない。何か今日でお詫びを…！」

A「い、いえ！そんなの大丈夫ですよ！それに、遅れたと言ってもまだ待ち合わせ時間から数分しか経っていませんし、全然気にしていませんよ。」

無花果「だ、だが……可愛い恋人を少しでも待たせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいなんだ。だから…」

走った後だったので、息を乱しながら、そうAに言葉をかけていたのだが…

…Aが、何故か笑っている事に気付いた。

無花果「？…ど、どうした？何かおかしな所でも…」

A「す、すみません……どんなに早く行っても、いつもいつも待ち合わせ場所には無花果様が先にいて…完璧な無花果様が、抜けている姿なんて滅多に見れないから…ちょっと可愛いななんて、思っちゃって…ふふっ。」

無花果「な…！」

A「ご、ごめんなさい…可愛いなんて、でも、本当なんです…！」

無花果「い、いや、言われ慣れてなくてな、少しこう、戸惑っているというか。」

…誰かに、可愛いなんて言われたのは初めてだった。
なんだろう、この気持ちは…

無花果(何だか、むず痒い…小っ恥ずかしい。)

Aが、私に「可愛い」と言われている時も、同じような気持ちになっているのだろうか。

無花果(…本当に、そうだとしたら、嬉しいかもしれない。)

私の言葉でこの様に、感情が動いていたら凄く嬉しいな…。

A「ふふ、じゃあ行きましょう？無花果様。」

無花果「あぁ、そうだな。」


…ふと、私達と同じカップルだろうか。女性二人が並んで歩いているのが見えた。

無花果(……)

お揃いの、マフラーだろうか。…幸せ絶好調、といったお二人だ。

無花果「……！すまない、少し行きたい所が「できた」のだが、良いか？」

A「？はい、是非！」

無花果様と、デート。(中編)→←乙統女様とのとある一夜(後編)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す