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「いらっしゃ・・・お、銀さん」
「よっすA。いつもの」
「居酒屋にいつものと言ってパフェ出てくる店なんて普通ないからね」
「マジかこの店普通じゃねえな」
「出てけ」
そんなんだから頭から砂糖生えてくんだよと笑ったら鼻クソほじりながら流されたので鼻の中と指にジェット殺菌スプレー噴射したら痙攣してた。
面白い。
「うんうん、白血球みたく衛生的、さあ銀さん新しい顔よー」
「誰の顔が綿菓子パフェだって?」
白血球、という言葉に少し反応したが、やがて普通にに持ち直して普通に食べはじめた。やっぱ白血球じゃなくてゴキブリだったわ。
「・・・」
この時わたし達は別に駄弁ったり、彼が店の専用糖分メニューに対して口にすることはない。
それはやたら厳格な職人が食べ物にこだわるあまり胃に収めるたびに甘美なスメルが鼻腔をくすぐりとか蕩ける舌の感応に体を震わせたりといった神聖なものにしてしまう、ということではなく(もしそんな事が彼の脳内で繰り広げられていたのならば抱腹絶倒ものである)、本当に何も喋る事がなく、彼も本当に、ほぼパフェだけが目的であると思うので、私には無関心だからである。
さっきみたいに申し訳程度の漫才はしてみたりするが。
しかし、実を言うと私はこの時間がとても好きだった。
店にはカウンターの延長線上の壁に、少し大きめの窓があるのだが、その下に丁度ペットのハムスターがいるケージがある。
この男が一人だけ来ている間は、お代をツケられる代わりに餌やりをすることが出来る、と言うよりは便乗してサボれる、というのが私の平日にて静かな喜びだった。
「ごっそさん」
「はーい」
それから何も言わずに出て行く。付け加えていうと、この男は丁度仕事終わりの時間帯に来店するので、彼自身も名前を覚える程度に好き、という訳だ。
「チューパット二つと枝豆一つくれぃ」
「いらっしゃいー」
「あと鬼嫁」
こいつは閉店しても居座るから嫌い。
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作者名:めだまやき | 作成日時:2018年10月22日 0時