第二十二話 ページ24
「つまり《GSS》の連中がマフィアを仲間割れさせるために《荒覇吐》になりすまし、この旦那を襲ったが失敗した、と」
中也が右脚に体重をかけて腰に手を当てた。
「そうなるね」
「んじゃ一連の黒幕は《GSS》の大将?」
「その可能性は高いと思うけど」
「うう……寒い《GSS》の現総帥は冷徹な異能者。しかも彼は北米の秘密機関『ギルド』と深い関係にあるという噂だ……誅伐するにしても、相当な準備をしなくてはならないと云うことができる。佑子君、暖炉の燃料おかわり…」
「……どうぞ」
佑子は近くに落ちていた高価そうな絵画を手渡した。
その様子を見ながら太宰は云う。
「誅伐する必要はないんだ。僕達の目的は先代復活の嘘を大衆に晒すことなんだから。てことで蘭堂さん、訊きたいことがあるだけど」
「ううむ、いいとも。銀の託宣を持つ者の指示には逆らえぬし……そうでなくとも森殿は私を高く取り立ててくださった恩人……」
「それはよかった。それじゃあ蘭堂さんが擂鉢街で目撃した《荒覇吐》について詳しく教えて貰おうかな。犯人に繋がる情報は、今のところそれしかないから」
「ああ……あれは……善く覚えているとも」
蘭堂は毛布に顎を埋めるように俯いた後、小さく「忘れるものか」と云った。
「蘭堂さん?」
太宰が蘭堂を見た。
蘭堂の手が震えている。太宰にはすぐに判った。
───この震えは寒さのためではない。
「私は……生き残った。だが周囲の部下はことごとく…燃えてしまった。あの黒い炎で……太宰君。君の作戦は正しい。犯人を誅伐するのではなく、企みを暴くのみに止める……そうしたまえ。そうすべきだ。何故なら、あれは本当に、神なのだから。人間が束になっても敵う可能性はまったくないのだから……」
蘭堂の寒色の瞳には、はっきりと恐怖が揺れてきた。
すん、と佑子は鼻を鳴らす。佑子はオオカミになれる異能力の他にもう一つ、人より優れているものがあった。
それは嗅覚。つまり鼻が効くのだ。
生来より嗅覚が人並みはずれて鋭敏で、獣並みの鋭い嗅覚で生物や植物の持つ匂いを嗅ぎ分け、失せものを見つけ出したり、相手の人柄や言葉の虚実などの感覚的な判断をする事ができる。
嘘偽りの言葉はない真っ直ぐな言葉だと佑子は太宰に目配りをする。太宰はその視線を受け、蘭堂を見る。
「詳しく話してよ」
太宰はうっすらと笑った。
「面白くなってきた」
蘭堂はひとつ咳払いをし、陰鬱な目で四人の子供を見比べてから、口を開いた。
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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421
作成日時:2023年6月15日 20時