第十四話 ページ16
土下座で謝罪する優羽に佑子は何も言わず近付く。
ぽんっと肩に手を乗せると優羽は顔を上げた。
「君が謝る必要はない。悪いのは中也君を煽る兄さんだから」
「え、僕…」
「いやでもうちの兄が短気なのが悪いんだし…ほんとごめんなさい」
「お、おい…優羽？」
「お互い苦労するね、こんな兄を持つと」
「そうなんです、ほんと。わかってくれますか、佑子さん」
「ユウでいい。君、名前は？」
「優羽です」
「そう。じゃあゆーちゃんって呼ぶね」
「はい、ユウさん！！」
完全に置いてけぼりの兄二人を他所にガシっと手と手を握り合う彼女達。今この時を持って兄のせいで苦労する妹同盟が結成されたのだった。
えぇ。って物言いたげな顔をする兄二人、笑いを堪えるのに必死な森は一度咳払いをした後、真剣な表情を浮かべた。
「さて。妹二人は仲良くできそうだし……後は君達二人だね。二人共、仲良くしないと駄目だよ？こへは命令だ。万一仲違いによって任務を疎かにしたという報告が私の耳に入ったら……判っているね？」
森がゆっくりと微笑んで二人を見た。
不可視の冷気が周囲に広がった。
「返事は？」
沈黙。
「返事は？」
「……はい」
二人の少年の、苦々しい声が聞こえた。
「よろしい。では行きなさい。良い報告を期待しているよ」
太宰と中也が相手の道行きを邪魔しながら歩き去っていく様子をその一歩後ろから見守る妹二人。互いに顔を合わせ、大きなため息をついたのだった。
◇◇◇
青白い空が、横浜の上空に広がっていた。
見上げれば誰しもが深呼吸したくなるような、気持ちのいい空だ。だが空を見た何人かの人間は違う意見を抱いた。
青白く透明すぎる。これでは地上で破壊の炎が燃えた時、黒煙が空に鮮やかに刻みつけられてしまう。
そしてその黒煙は間もなく上がろうとしていた。
太宰達は不承不承ながらも捜査を開始。黒煙の元になる火種を見つけて消すために。残された時間はあまりなき。
静かに晴れた空の下、四人は歩いていた。
うち二人は不機嫌そうな顔で、言葉も交わさず、互いに5米ほどの距離を空けたまま。そんな兄達の様子を見て妹二人はため息を一つ。いや一つどころか二つ三つ以上ここに来るまで吐いていた。
「……おい」
中也が小さく云った。
前方を歩く太宰は返事をしない。振り返りもしない。
「……なァ、おい。どこ行くかくらい教えやがれ」
「いい天気だねぇユウ。いい天気すぎて妖精さんの声が聞こえるねえ」
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作者名：十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ：http://yuuha0421
作成日時：2023年6月15日 20時
