じゅじゅ短編 (ページ35)

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田舎育ちページ35

「本当に、ありがどうございましたっ！」
ボタボタと大粒の涙を流しながら七海が頭を下げて来た。五条や夏油、硝子がこちらを見ているけれど…何かやったっけな。

田中須臾はとある離島出身の呪術師である。
その島は地図には存在せず、日本国内において島を認知する者は数少ない。上層部や御三家の記録にすら残らない…そんな場所から来た須臾は原伊仙の使い手である。

田中は強い。
呪術師最強とも目される俺_五条悟を以てしてもそう思わされる。陰陽道、錬金術の源流となった原伊仙は強力な術式だ。攻守共に優れていてこちらで言う反転術式も扱える。
昔何が出来るか聞いた時の『今の所死者蘇生以外』と言う答えが忘れられない。今の所だぞ？
何時か死者蘇生が可能になれば上はアイツを手放さないだろう。けれどそんな田中が一体何をやらかしたのか…

田中の強みは術式だけには留まらない。
体術にも精通しており、あの悟が一方的にやられる姿は、言っては悪いが爽快だった。
それに彼女は私の恩人でもある。あのこの世の物とも思えない、クソみたいな味を消してくれた。恐らく秘伝に当たる様な術で私の舌に印を刻み、呪霊の味のみを打ち消せるようにした。
だから彼女の事はなるべく庇ってやりたいとは思うが、七海が泣くほどだから無理かもしれないな。

須臾は成るべくして成った術師だ。
多のために少を切り捨てられる判断力。
術式のキレ、体術のセンス。
おまけに私よりも精度の高い反転術式。
だけどあいつは何処か打たれ弱くて、毎晩悪夢を見ては飛び起きて居たのだと言う。少しだけ痩せて陰のある表情は、庇護欲を掻き立てられた。部屋に招いて髪を梳いてやるといつの間にか寝落ちていて、警戒心を持てと叱った事もある。
なのに私の知らない所で七海を泣かせるなんて成長したものだよ、まったく。

もう駄目だと、死を覚悟した。
灰原の腹が抉られて、私の背も袈裟懸けに切り捨てられた。視界が霞み、朦朧とする頭で懐からある人形を取り出した。
それは以前田中先輩に頂いたもので、この世に五つも無い貴重な素材で出来ているのだとか。
その人形を握り締めとある文言を唱える。
「ゲホッ…【隠】」
［ぉオオォーーん］
現れた黒い人影。産土神からの攻撃を受け止めたソレは何度も拳を叩き付けた。
そこからは覚えていない。気づけば産土神は消えていて、灰原と自身の傷が消えていた。
私達は彼女に命を助けられたのだ。

『あー、うん。渡したねそういえば。返して』
「えっ」