兄と弟の約束 ページ36
「あの方は…ずっと泣いています。泣いて泣いて、自分の生きる未来さえも諦めてしまった人」
「生きる、未来も……？」
どういう意味なのだろうか。ユーリはまだ16歳。人間に当てはめてもまだ若い…少女と呼ばれる年齢だ。それに、ユーリが病を得たという話も聞いたことがない。それなのに、シリルの言葉にはまるでユーリが近い将来命を落としてしまうような
「兄上は、生きることより辛いことをご存知ですか？」
「ああ」
エリザベスを看取る度に思う。オレも彼女と共に逝きたい…と。自害したことも、誰かに殺されたことも両手では足りない程度にはある。けれど、それは許されなかった
「…義姉上は、死を切望するくらい深い絶望を抱いています。そして、誰かの役に立ってこそ、自分の存在価値が生まれる…とも。だから、反射的に自分を犠牲にするような言動をとるんです」
「…オレにあいつを救うことはできるか？」
「…そういうところ、エリザベス姫にそっくりですね。…本当に二人共、傲慢な方たちだ」
オレとエリザベスを非難するような言葉だったにも関わらず、シリルの唇は優しい笑みを象っている
「義姉上を救えるのは、兄上だけです。エリザベス姫は当然として、愛し子である菫とマリーにも救えない。アルテミス様とルナーリア様にも」
「なんで、オレなんだ？」
「義姉上は、どんなに辛くて苦しい出来事が起こっても兄上が幸せならそれでいい、って本気で言うような人なんです。だから、兄上にしか救えない」
ユーリがそこまでオレを大切に想っているのは知らなかった。そして、同時に
「…分かった。ユーリを悲嘆のうちに死なせねえって約束する」
オレを幸せにするのなら、ユーリだって幸せになってほしい。だから、悲嘆のうちに死なせたりしない
「良かった……」
ホッとしたように微笑ったシリルの瞼が徐々に閉じて行く
「シリル……！？」
「兄上……」
「なんだ……？」
「僕…兄上とゼルの弟で…良かった……。ありがとう…あに…うえ……」
深く息を吐いたシリルは、オレやゼルドリスと同じ翠の瞳をゆっくりと閉じた
「オレもお前の家族で良かった。…ゆっくり眠れ、シリル」
光の粒となって消えた弟の冥福を祈りながら椅子から立ち上がったオレは、心を落ち着かせて部屋を出た
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pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» 返信ありがとうございます。また何かありましたらお教え頂けますと幸いです (2021年7月4日 20時) (
レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ありがとうございます！今読みました。これからも面白い小説頑張ってください！応援してます！ (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(りんご)(プロフ) - 瑠李さん» コメントありがとうございます。今、消しましたのでご覧頂けると幸いです (2021年7月4日 19時) (レス) id: cf9e4ba859 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - 国王陛下の帰還が同じセリフがあります (2021年7月4日 19時) (レス) id: 88c711d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アストライアー | 作成日時：2021年7月3日 22時
