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夢が告げる予感 ページ23

「…リー?エリー、どうした?」

 ぼんやりとしていた意識が覚醒する。致死量の毒が宿った、身体に纏わりつくような甘い声が私の意識を揺さぶった

「お父、さま……?」

 声を発して初めて気がつく、普段発する声より幾分幼い己の声。辺りを見回すとそこはリオネス王城ではなく、旧イデアール聖王国の主宮殿・メリルローズ宮殿の王専用の私室(プライベートルーム)だった

「何度言ったら分かる?お前は、エリーだ。私の愛する妃で、このイデアール聖王国の王妃 エレオノーラだ」

「はい…ラージュさま」

 父の望み通り、愛する妃(エレオノーラ)を演じると父は狂気が入り混じった笑顔で私の頭を撫でる。かつて愛した亡き妃にそうしていたように

 青薔薇が描かれたローテーブルには、私の大好きな甘いお菓子がたくさん並んでいる。温かいミルクティーもある。けれど、見ている世界が色褪せる。心が潰されていく。大丈夫だよ、傍にいるから。そう言ってくれる家族もこの部屋には入られない。国王たる父の命令で、それが許されないから

「美味しいだろう?」

「はい」

 あつあつの甘いミルクティーを一口飲む。猫舌の私には熱すぎる温度だが、父の前でミルクティーを冷ますことは許されない。母は、そんなことをしないから。口の中を火傷しようが、父には関係ない。父が望むのは、愛する妃(エレオノーラ)を演じる(わたし)なのだから

 早く、覚めてほしい。こんな夢の世界、1秒たりとも居たくない。早くみんなに会ってこんな夢を忘れたい

「エリー、私の可愛い可愛い妃。公爵家の分際で私からエリーを奪おうとする輩もいたが、そんなものは関係ない。神にだって私からエリーを奪えない。エリーもそう思うだろう?」

「……」

「エリー?」

 ドレスに食い込む爪。男性の力で握りしめられた腕にはくっきりと痕がついているだろう

「エリー、どうした?」

「いえ……。わたくしも…そう思います」

 否定なんてあり得ない。私に与えられた選択肢は肯定だけ。否定した日には、肩や腕をもがれるくらい握りしめられ、どれだけ母を愛しているか言われ続ける

「怯えることはない。お前を傷つける者は何人たりとも許さん。私だけがお前の味方だよ、エリー」

 幼い頃、喉から手が出るほど欲しかった"味方,,の二文字。父から発せられたその言葉に怒りと憎しみが湧き…プツンと糸が切れたように意識を失った

気分がイマイチ乗らない女神→←見抜いていた親友



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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年10月31日 10時

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