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生まれてきたことが間違いなんてあり得ない ページ17

「さて…そろそろ寝ようかしら」

 書斎の壁にある時計の針は深夜1時を指している。そろそろ寝らなければローレライに怒られてしまう

「!」

 寝室に行こうと椅子から腰を上げた瞬間、部屋に淡い蒼銀の光が出現した

「優梨……?」

 淡い蒼銀の光と共に部屋に転移してきたのは、わたくしの親友・エルティアナ…否、優梨。周りを明るくする笑顔がトレードマークの親友の顔からは生気が失われていた

「優梨、どうしたの?」

「紅葉…私……」

 今にも壊れてしまいそうな優梨をそっと抱きしめ、ソファまで誘導する

「何があったの?ゆっくりでいいから話してみて」

「私…生まれてきちゃダメだったの……」

「え?」

 優梨が告げた衝撃的な言葉に思わず目を瞬く

「私の存在が…っ…この世界に齟齬を生んだ……!」

「落ち着いて、優梨。どういうこと?あなたが何をしたって言うの?」

「私の魔力は…想像したものを具現化するもの。私が向こうの世界にあったものをこっちの世界で再現したから欲深い者たちを刺激してしまった。アデライドがリーナの身体に宿り、フォスター公爵と共謀していた時もそう。アデライドは…リーナの身体を使って村をいくつか滅ぼしたの。犠牲者は数百人に及ぶわ。…私が…余計なことをしたから…無辜な民を死に追いやった」

 優梨は呆れるほど優しい子。甘いとも思うけれど、それは彼女を構成する大切なもの。偽善だとか、傲慢だとか、我儘だとか、そんな風に言われてしまうかもしれないけれど、それは人それぞれの価値観の違いだから仕方がない。万人に受け入れられる考えなんてないのだから

 顔も知らない人の為に涙を流し、自らのことのように痛みを覚える…なんてわたくしにはできないわ。きっと、わたくしは他人にそれほど興味がないのね。でも、優梨は違う。本質的な部分で人を愛し、慈しみ、人との繋がりを大切にしている。それは、優梨が様々な経験をしてきたからこそのもの。けれど……

「わたくしは…生まれてきたことが間違いだなんて思わないわ」

 生まれてきたことが間違いなんて、そんなことあるはずがない。どんなに凶悪な人だとしても誰かに望まれて生まれてきた。性犯罪などで宿った望まれない命もあるけれど、彼らは敢えてその人を選んだのかもしれない。犯罪に巻き込まれた人の傷を癒す為に

誰かに望まれてきた命→←女神が仕掛けた罠と気付いたこと



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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年10月31日 10時

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