Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ43)

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選択肢なんてあってないようなものページ43

「メリオダス、様……？何を、言って……っ」

　メリオダス様が飄々とした表情で放った言葉に困惑するエリザベス王女と菫さん

「憶えて、ないの……？」

　呆然としながら問うた菫さんの言葉が癪に障ったのか、メリオダス様は僅かに眉間に皺を寄せる

「憶えてねぇとか、それ以前の話だ。オレはこんな女知らねえぞ」

　未だショックから立ち直れないのに、数多の修羅場を潜り抜けた私の本能は脳内に"記憶喪失,,の四文字を刻みつける

　最高神が私に与えた絶望は愛する者の死でも裏切りでもない。愛する者の中から己に関する一切の存在が消えるという、私にとって死よりも辛いもの

"…誰だ、お前？,,

　遥か昔…聖戦の爪痕が残るブリタニアで再び出会ったメリオダスに告げられた言葉が脳内で再生される。あの時も、彼の隣には当たり前のようにエリザベスがいた

"オレはお前が好きだ。姉貴が居たらこんな感じなんだろうな、って思う。オレは、お前を家族として愛してる,,

　忘れてしまうのなら。忘れられてしまう程度の存在だったのなら。何度初めましてを繰り返しても同じこと。いつか、神の気まぐれによって忘れてしまうのだから

　不意に記憶喪失になっていた頃の自分を思い出し、泣き出したくなるような…或いは消えてなくなりたいような、強い罪悪感を覚える

　大切な人に忘れられることがどんなに辛いことか、私が誰よりもよく分かっていたのに。私は、アリーたちに同じ苦しみを味わわせたのね

　以前なら抱いていたであろう憎しみは湧かない。その代わり、胸にぽっかりと穴が空いたような途方もない虚しさに襲われた

「初めまして、メリオダス様」

　あなたがまた"初めまして,,を望むのなら、私は笑顔でそれを受け入れましょう

「私は、エルティアナ=リリアーヌ。旧イデアール聖王国最後の女王で人間界(こちら)では〈霊魂の女神(ラ・ヴィータ)〉と呼ばれています。是非、ユーリとお呼び下さい」

　選択肢なんて、与えられているように見せかけて本当は私に選ぶ権利なんてどこにもないのだから