憎しみに惑わされることはない ページ36
「ねぇ、エディ…幻想は所詮、幻想でしかないのね」
エドワードがいる手前、無理矢理自分を落ち着かせた私は困惑する彼に問う
「…そんなことは、君が一番知っているはずだろう？」
深いため息と共に告げられた言葉に思わず苦笑する。本当に、この王子は容赦も遠慮もない
「そうね」
人々が思い描く女神様なんて所詮は幻想に過ぎない。私たちは、そんなに綺麗な存在でも、優しい存在でもない。幻想や理想を押し付けられることがどんなに苦痛か知っていたのに、私はそれをエリザベスに押し付けていたのだ
「ティーカップ、壊してしまってごめんなさい」
動揺のあまり、床に落としてしまったティーカップと同じものを魔力で造るとエドワードの目が丸くなった
「これが…『
「そう。想像を具現化する魔力よ」
「これはちょっと…すごいな。事実は小説よりも奇なり、とは言うけれど…想像以上だ」
「…あなた、普段は隠しているけれど好奇心が旺盛なのね」
クスッと微笑ってエドワードに告げると、彼は恥ずかしそうに口許を隠す
「年甲斐もなく興奮してしまったよ。すまないね」
「好奇心に年齢は関係ないわ。恥ずかしがることなんて何もないのよ」
先程の動揺が嘘のように心が凪いでいる。それは諦めなどではなく、憎しみの理由が分かり、それを受け入れたが故のものだ
エリザベス王女に謝っても意味なんてない。あの子は、私が憎しみを抱いていたことなんて知らないのだから
「何か…すっきりしたような顔をしているね」
「…さっきは動揺してしまってごめんなさい。でも、私、やっと素直にエリザベスと向き合えそう」
嫉妬や失恋による胸の痛みは消えないし、裏切られたことによる憎しみは消えない。けれど、今までのように
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作者名：アストライアー | 作成日時：2021年7月24日 0時
