Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ27)

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憐憫で拾った娘への愛ページ27

「…何故、そのようなことを？」

　トラウマを突かれたにも関わらず、私の頭はやけにクリアだった

「お前が国を滅ぼすような女王とは思えん。〈理想の女王〉と呼ばれるお前が我が王家に伝わる文献に書かれている通り、魔神王の手を取り、国を滅ぼしたとはどうにも思えんのだ」

　リオネス王家には、精霊や旧イデアール聖王国に関する文献が残っている。それは、250年ほど前にクレア王国を滅ぼした際に残っていたクレア王家のものだ。かの国の王家は、旧イデアール聖王家の遠縁の者を始祖とする。故に精霊や旧イデアール聖王国に関する文献が多く残っていたのだろう

「…私が魔神王の手を取り、国を滅ぼしたことに変わりはありません。何がどうなって〈理想の女王〉などというトンデモナイものが出来上がったのかは存じ上げませんが、噂の女王ほど美しい存在ではありません。陛下とて、国や王家の為に"様々な手段,,を取られたことがおありでしょう？」

　"様々な手段,,に含まれた真意を正確に汲み取った国王陛下は苦々しい顔で頷いた

「…そうだな」

　甘いミルクティーを飲むと少しだけ荒れた心が落ち着いたような気がした

「…お前を傷つけると分かった上ではっきり言おう。儂は、エリザベスとは異なり、お前を哀れんで娘にしたのだ」

　知っていた。分かっていた。けれど、実際に言われると胸が張り裂けそうなくらい痛む

「憐憫で拾った娘の正体を知って尚、追い出さなかったのは何故ですか？」

「…その時はもう、お前を娘として見ていた。女神でも、精霊の元女王でもない、ただのユーリとして。追い出さなかったのではない。追い出せなかったのだ。私情を優先させ、お前を我が国の闇に引き摺り込んだことは申し訳なく思っている。本当に、すまない」

　王としてではなく、一人の父として頭を下げる陛下に胸が痛む

「…陛下、私は初めからこの国が魔神族に侵されることを知っていました。女神にとって五種族…時には精霊すらも、世界を動かす駒でしかないのです。ですから、陛下が謝られることなど何一つありません」

「だが……」

「…女神(私たち)が他者と相容れることはありません。女神という存在は人々が思い描くような優しい存在ではないのです。ですから、陛下が罪悪感を抱く必要などありません」

　神なき時代が来たとしても、女神は消えない。女神は支配者ではなく、世界を動かす装置の一つに過ぎないのだから