Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ17)

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女神の想い人ページ17

「メリオダス、って…〈七つの大罪〉の！？」

　大の〈七つの大罪〉嫌い(主にメリオダス様)で有名なベロニカ王女が悲鳴を上げる

「ダメだよ、あんな奴！！」

「ベロニカ！そんなに騒ぐなんてはしたないわ」

「でも、姉さん……！」

「あ…あの…ユーリ……」

　マーガレット王女がベロニカ王女を窘める傍ら、エリザベス王女が不安そうに眉を下げて私を見つめる

「メリオダス様、は……」

「…他に好きな女性がいらっしゃるそうなのでハッキリキッパリ断られました」

　にこっ、と何の憂いもないように微笑んでエリザベス王女に告白の行方を告げると王女は酷く安堵したような表情(かお)になった。そんな王女を見て、胸の裡にドロドロした言い表しようのない不快感や理不尽極まりない苛立ちが溢れる感覚があり、唇に微笑みを乗せたままティーカップに口をつけた

　最低ね、私。メリオダスが好きな女性が誰か知っているのに、その本人に伝えないなんて。…ううん、これは私が伝えることではなくてメリオダス本人が告げること。でも、私が言わなかったのはそんな美しいものじゃないわ

　嫌だった。目の前の姫君(エリザベス)に愛する人(メリオダス)を取られるのが。彼の想いを告げて、喜びに満ちた笑顔を見るのが嫌だった。…ただ、それだけだった

　エリザベスは、純粋で無垢で…悪を悪と迷わず断罪できる子。その裏にあるものは知らずに、悪を悪と断罪し、人々に称賛され、愛される子。悪い子ではないことくらい、誰よりも知っている。少しでも悪意があれば嫌いになれたかもしれないのに、善意と正義感で構成されたような子だから憎しみはあれど嫌いにはなれなかった。いっそのこと、見限ってしまえれば良かった。善と悪だけで判断できるほど、世界は単純ではない…と。けれど、それはできなかった

　恋の話で盛り上がっている王女たちにバレないように密かにため息をついた私は、そっと目を閉じた

　私は…メリオダスに嫌われるのが嫌だったのだ。だから、彼が愛するエリザベスのことも好きだと思い込んで…嫌いなんて気持ちに蓋をして、二人が望む姉を演じていた。臆病で卑怯で、どうしようもない愚か者。それが私にとっての最善だと、信じ込んでいた