Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第八章〉 (ページ11)

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女神の笑みと無知な大罪人ページ11

「ん…美味しい……！」

　テーブルに置かれた菓子を摘んで一口食べたユーリは、光の加減で様々な色を宿す蒼色の瞳をキラキラと輝かせる。と、そこでオレは一つの疑問を口にする

「そういや、お前…なんで王都で変装しなかったんだよ？〈霊魂の女神(ラ・ヴィータ)〉のことを公表した、って知ってたろ？」

　あの国王(バルトラ)が、ユーリ・リオネス元第四王女の正体を公表することを〈霊魂の女神(本人)〉に知らせないはずがない

　オレの読みは当たっていたらしく、ギクッと肩を揺らしたユーリは少し居心地悪そうに目を逸らす

「…初めはエリザベス王女のお見舞いだけして精霊界に戻るつもりだったんです。歩いてもリオネス王城内だけだから大丈夫、と高を括っていたんですけど…その…後先考えず城を飛び出してしまったので民にバレちゃって……」

「…自滅したのか」

「うっ……」

　しっかりしているようでどこか抜けているのがこのエルティアナ=リリアーヌという女神なのだろう。ユーリと名乗っていた時も確かにたまにポカやらかしていた記憶がある

「だって！私の肖像画なんてそんなに残ってないんですよ！？それに、今は〈霊魂の女神(ラ・ヴィータ)〉とか〈理想の女王〉なんて呼ばれてますけど女王在位時は〈氷薔薇(ひばら)の女王〉なんて呼ばれていたんですからね！！あんなに慕われているなんて知りませんでした……」

「〈氷薔薇の女王〉？」

　聞き覚えのない異名に首を傾げると、紅茶を飲んで少し落ち着いたらしいユーリはコクンと頷いた

「"氷のように鋭く冷酷な判断を下す、薔薇のように美しい女王,,…って意味の異名…いえ、蔑称ですね。先代…私の父の代から蔓延っていた聖王国(イデアール)内の闇を取り除いていた私を嫌っていた貴族がつけたものですから」

「〈霊魂の女神(ラ・ヴィータ)〉に〈理想の女王〉に〈氷薔薇の女王〉…三つも異名を持ってるなんてすげーな！」

「…褒められた気がしません」

「褒めてるさ。ある意味、珍獣だぞ？」

「やっぱり面白がってるじゃないですか！！」

　ぷりぷり怒るユーリがおかしくて久方ぶりに心の底から笑った。至って普通の光景だからこそ気付かなかった。ユーリに…エルティアナ=リリアーヌにオレとエリザベスがどんな仕打ちをしたのか。何を願ったのか。その願い故に背負うことになったエルティアナの運命も、何もかも知らない子供のままだった