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いつかのワルツを君と -Ryota.K- ページ13

白い鍵盤に踊る細い指。

歌うように奏でられる名曲。


『子犬のワルツ…』


可愛い顔をした少年が紡ぐショパンに、私は恋をした。

中学への入学と共に辞めるピアノ。

最後の発表会。

未練も何もなかった私をピアノに繋ぎとめたのは、名前も年も知らない少年だった。

ピアノのレッスンに通わなくなっても、時々あの少年の子犬のワルツを思い出しては鍵盤をなぞる。

どんなに時が流れても…あの少年の子犬のワルツだけは忘れない。

鈍った私の指が拙く紡ぐショパンも、目を閉じればあの少年のショパンになる。

高校に入っても週に何度かは放課後の音楽室へ通い、子犬のワルツ。

まわりから少し変わり者扱いされようが、そんなのどうでもよかった。

何年経っても、私の頭の中では色褪せずに彼のショパンが生きている。

今日もそうやって、ピアノを弾いて…何も変わらないはずだった。


『…えっ』


音楽室から微かに洩れるピアノの音色。

それは確かに子犬のワルツを奏でている。


『…どうして』


聞き覚えのある音色。

ハネるような癖のある演奏。

ずっとずっと頭の中で流れていた音楽より少し大人になった…でもまだあどけなさの残る無邪気な子犬のワルツ。

人気のない廊下を走って音楽室のドアを開けると、スラリとした男子が鍵盤に指を踊らせていた。


『きみ…』

「あ、すみません!勝手に弾いちゃってて…」


私に気づいてこちらを向いた彼は、申し訳なさそうに眉を下げた。


『あ、いや…別に私のピアノじゃないし。それより…続き、弾いて?』


私の言葉に戸惑いながらも、彼の指はまた鍵盤を駆け回る。

間違いない。

目を閉じれば、あの時の光景と音色が重なる。


「あ、あの…」


演奏が終わっても目を開けない私を不審がったのか、声をかけてくる彼。


「俺、いつも聞こえてくる子犬のワルツ、誰が弾いてるんだろって思って…」

『…君、1年生?』

「は、はい。1年の片寄涼太です」

『そっか』


2つ下。

確かにあの少年もそれくらいだった気がする。


『片寄くん、変わってるね』

「…A先輩ほどじゃないですよ」


私の皮肉に片寄くんは何かをつぶやいたけど、それはあまりにも小さすぎて私の耳には届かなかった。


『子犬のワルツ、好きなの。また弾きに来てよ』


上手く言えない私のお願いに、片寄くんは笑顔を返してくれる。


『約束、ね』


差し出した小指に、片寄くんのそれが重なる。

…また会いに来て、私のショパン。

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ゆと(プロフ) - りあさん» コメントありがとうございます。大変失礼致しました。修正しました。 (2015年2月11日 17時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - いきなりごめんなさい亜嵐のローマ字表記はALANですよ (2015年2月7日 11時) (レス) id: 601b6c9cb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - さんさんめさん» コメントありがとうございます!きゅんきゅんしていただけて安心しました…!更新頑張っていきますのでお付き合いよろしくお願いします。 (2015年1月29日 19時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)
さんさんめ - めっさ きゅんきゅんします !! *\(*'ν'*)/* 更新岩張って下さい ! (2015年1月14日 22時) (レス) id: 240a59d6f9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆと(プロフ) - ゆうひさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。更新頑張ります! (2015年1月9日 21時) (レス) id: 05ad7016c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆと | 作成日時:2014年11月19日 0時

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