君と僕の境界線

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【A、現場でめちゃめちゃ浮いてるらしいじゃん】

【早速共演者様からの悪口ですか】


龍友兄に情報流れるってことは佐野さんか片寄さんか。

まあ、こんな怪しい奴が現場の隅っこにずっといるんだから悪口くらい言われて当然だろうけどさ…。

まだオンエア前なのに険悪すぎ。


【そうやってすぐネガティブになる…言っとくけどな、涼太めっちゃ心配してんだぞ】

【片寄さんが？絶対ないわ】


そもそも心配されるようなことしてないし。

キャストとろくに会話しないのも、SHINOのキャラ云々の前に芸能人様方が僕と距離とってるからだし。


【涼太でいいよって言ったのに頑なに片寄さんって呼ぶし、SHINOさん俺らと壁つくるからなかなか話せなくて。龍友くんどうしたらいいと思う？って超真剣に相談されたからな俺】

【龍友兄勘違いしてるみたいだけど、壁つくってんのは僕じゃなくて片寄さんたちだからね？】


どうあがいても芸能人様と凡人は同じ世界には行けないんだよ。


【本当にそうだと思う？】


言葉を選んでいたのか、少し間のあった返信は至ってシンプル。


【どういう意味？】

【A、昔からそうだよ。なんでもネガティブに考えちゃって自分から線引きして距離とって壁つくって。無意識に相手を拒絶してんの】

【まあ、今回はSHINOだからってのもあるんだろうけど…別にSHINOをミステリアスで売るからって孤立しろって言ってるわけじゃない】

【そんなんじゃ、あんまり楽しくないだろ？演技してても】


ああ、そうかも。

たぶんいつの間にかまたネガティブに考えて、みんなとは違うんだって僕のほうから線引きしてた。

片寄さんだって、最初からちゃんと歩み寄ってくれていたんじゃないか。

僕が片寄さんの言葉を捻くれて捉えていただけなんじゃないか。


『…なんか、馬鹿みたいだな』


役に固執してしまうのは僕の悪い癖だ。

SHINOはミステリアスだから、ってそれを都合良く言い訳にしてただけで、ただ違う世界が怖かっただけなのかも。


【考えたら、僕が悪いのかもって気になってきた】

【でもさ、どうしたらいいのかわかんない】


いつの間にかまた龍友兄に頼ってしまう自分がいる。


【Aからちょっと歩み寄るだけで大丈夫だよ。それできっと上手くいく】


『…簡単に言わないでよ』


【どこからくるのその自信】

【俺が上手くいくって言って上手くいかなかったことないでしょ？】


…たしかに。

あーあ、僕、龍友兄に助けられてばかりだ。

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