レモンと金糸雀 IV (ページ27)

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Ⅲ ページ27

まぁちゃんと手を繋いだ感触がまた残っている。

目を開けると数年前も見た気がする天井が。

『いｯ……？』

鼻から管が入ってる。なにこれ。

腕にも色々ついてるな。

うーーん……とりあえずナースコール！

「Aちゃん！おはよう〜随分長い事寝てたねぇ〜」

『おはようございます…… あの……』

「あぁ！今説明しますからね。花谷先生呼びますね」

『お願いします』

どうやらまた母の病院につけたのだろう。顔見知りのナースさんだった。

『え、頭縫ったの？！』

「うん。でもホッチキスだから髪の毛は大丈夫よ。てかもうすぐ出産なんだから髪切っちゃいなさい」

『あ、そうなのねよかった…。髪は今言うことじゃなくない？切るけどさ』

「とにかくあんたは事件に巻き込まれてんだからね。目ェ覚ましたんだからこの後色々聞きに来るから。」

『うげぇ…… あ、宏太朗さんに』

「もう連絡済み。15時前に来るそうよ」

『流石。え、でも今っていいの？』

「個室にしてるからいいのよ。時間は限られてるけどね」

『だとしてもありがたいね。毎日来てくれてたの……？』

「3日に１回って感じかな。必ずお腹の子とAにがんばれって呼びかけてたわよ」

『ほんと……』

「いい旦那さんに巡り会えたねぇ」

お父さんと大違い！とパソコンのカルテに向かいながらそう言うお母さん。

うちのお父さんは造形関係のお仕事をしてるよ。

具体的には未だに不明だけど、グラフィックだったりイラストだったり……

模写とか死ぬほど上手くて私も一時教えて貰って描いてたなぁ。

【おはよう。無事に起きてくれて嬉しいよ。テイくんも喜んでます】

父から溺愛してるハムスターと共にメッセージが送られてきた。ありがとうね。

あとは事務所に連絡したり、警察の方からの事情聴取をされたり、退院できるけどしばらく通院してもらうこと、赤ちゃんもすくすく育ってること……

などなどたくさんの御用を済ませていると時間は早いものね。

妊娠糖尿病対策のうっすい味のお昼ご飯を食べ終えたくらいに

ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ

『ぁ、はーい』

「！」

ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ

『いらっしゃい』

「……ｯ」

つかつかと歩いてきたと思ったら、私のことをおっきい手が抱きしめた。

「おかえりぃ……｣

『ふふ笑ただいま』

マスク越しにしてくれたキスってこんなに嬉しかったかしら？

そうお腹のまぁちゃんに問いかけた。