溺れた魚。【Fischer's】 (ページ10)

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"事件" ページ10

Side モトキ
高校時代、優空ちゃんの過去の話です。
暴力表現があるので苦手な方は''事件"、''事件2''、"事件3''は飛ばしてください。
飛ばしていただいても物語は繋がってます。
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忘れもしない"事件"の日。
あの日ほど、俺の力のなさを後悔した日はない。

《キーンコーンカーンコーン》

その日もいつもと変わりなく終礼のチャイムが鳴る。
8人のメンバーの中で同じ高校に入ったのは優空だけ。
久々に全員揃って土手に行くことになってるから早足で優空のいるクラスに向かった。
座ってる席も把握してるから見つけるのはとても簡単なことで。

モ「優空、帰ろ！」

いつものようにそう声をかけ顔を覗き込むとると何だか浮かない表情。

『ごめん、何か呼び出されたから先行ってて？みんなにも遅れるって言っておいてほしい』

いつもは俺を真っ直ぐ見るその目線は足元をゆらゆらと彷徨ってた。

モ「分かった。呼び出しって？」

『分かんない。グラウンド奥の倉庫に来てって手紙入ってて』

グラウンド奥の倉庫…そこはグラウンドを使う部活生ですら使わなくて滅多に人が通ることはないところ。
何だか胸騒ぎがした俺は分かった、と返事をしつつ念のため、とシルクに連絡を入れた。

俺の高校のグラウンド奥の倉庫分かる?
シルクあー、何か練習試合で行った時体育館から見えたかも。
シルクいかにも使われてなさそうな灰色のブロックでできたやつ?
そう。その倉庫。シルクそれがどした?
そこにソラが呼び出されたらしいんだよね。嫌な予感する。
シルクメンバーに連絡してすぐ向かう。
ありがとう

シルクはこの時から既に察しがよかった。
なるべく早くメンバーが到着することを祈って、俺は優空が呼び出された倉庫へと向かった。
場所が場所なだけに嫌な想像ばかりが駆け巡る。
心臓が早鐘を打つ。
それに伴うように歩を進める足も早くなった。

「騒いでも人は来ねーよ！」

『やだ、離して！』

倉庫の前。嫌でも聞こえるのは男の怒鳴り声と優空の声。
いちばん当たってほしくない嫌な予感は的中。

「お前押さえてろ！」

『助けてっ…シルク…モトキっ、』

中からは複数の男の怒鳴り声。
俺一人じゃ太刀打ち出来るわけはなかった。
それでも行かないと後悔する。
倉庫の扉に手を掛け勢いよく開いた。