溺れた魚。【Fischer's】 (ページ5)

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うるさい鼓動ページ5

Side マサイ
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ふと意識が浮上し重たい瞼を開ける。
半身に体温を感じそっちに向くと優空が寝てた。
俺の腕に腕を絡ませすやすやと。

マ「！？」

一気に体が熱を帯びるのがわかった。

……何だよ、この感覚。

目を閉じてるせいでよく分かる長いまつげ。
ふわふわとした栗色の髪の毛に白い肌がよく映える。
血色がいい唇は熟れた苺みたいに赤くて。
俺の腕に絡めた腕は指先まで細くてしなやか。

触れたい。

不意にそう思ってしまった。

あぁ、俺優空のことー…っ！？
いや。待て。こいつはただの幼馴染だろ。
ずっと彼女がいないから錯覚に陥ってるだけ。

きっとそうだ。
そうでも思わないとこれじゃまるで。

マ「……恋してるみたいじゃねぇか」

空いてる手で思わず顔を覆う。
そんなはずない。錯覚だ。

マ「優空は幼馴染、だよな」

自分に言い聞かせるように、ゆっくりと小さな声で呟く。
隣ですやすやと眠るその寝顔を眺めて。

ほんっと、幸せそうに眠るんだなぁ。

『…ん、』

マ「！？」

びっくりした。寝言か。
小さな声だったのに情けなく全身が跳ねた。
心臓が、鼓動が、ばくばくうるさいのはきっと驚いたせい。

優空の寝顔を眺めながらぼーっとしてたらいつの間にか眠ってた。

夢に出てきた優空と俺はまだ幼くて。
手を繋いでただ川沿いの道を歩いてた。
歩いてるだけなのにその表情はとても楽しそうに綻んでた。