検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:616 hit

戀の日常4 ページ4

「ん、今日は良い出来かも」

自分の作った料理を自画自賛しながら口に運ぶ。何ともまあ悲しい光景だが、話す人がいないのだからしょうがない。大学に通う様になって3年目。一人暮らしも3年目。家族と話せないのは寂しいが、生活面では少し厳しかった祖母の目が届かないアパート暮らしはそこそこ充実している。何せ好きな事を好きな時に出来て夜更しも出来るのだから。

「ふー、ご馳走様」

すぐに食器をキッチンに運び、スポンジを手に取り洗剤を付ける。柑橘系の匂いが鼻腔を刺激した。泡に包まれた右手の中にあるスポンジで皿に付いた汚れを落とし、お湯で洗い流してフキンで水気を拭き取る。小さな食器棚にそれを丁寧にしまい、さっさとやる事を済ませようとお風呂の準備をするために部屋に戻った。タンスからお気に入りのピンク色のパジャマと下着、バスタオルを持ちバスルームに向かう。脱衣場にある洗濯機の上に着替えを置き、脱いだ服を洗濯カゴの中に入れ浴室に入りシャワーの蛇口を捻った。

「冷た!」

誤って体に思いっきりかけてしまった。一気に寒さが襲ってくる。早く温かくなれと思いながら待っていると、5秒程して(ようや)くお湯になった。私は浸かるのが面倒臭い人なので浴槽内にお湯は張っていない。(もっぱ)らシャワーである。頭、体、顔と洗い10分程で全てを済ませると、全身をバスタオルで拭い服を着る。ここでまた一人暮らしの人にとって面倒な作業がある。そう、洗濯だ。全自動洗濯機は本当に便利だ。実家にあったのは二槽式洗濯機だったので、それを考えると世の科学技術の進歩には頭が上がらない。先陣者達に敬礼したい程だ。兎にも角にも脱いだ服を全て洗濯機に放り込み、ボタンを押す。洗いから脱水までこの動き一つでやってくれる何とも素晴らしい味方である。まあ、この後に干すというとてもとても面倒な作業が待っているのだが…それは今は置いておこう。それよりもと私はドライヤーで髪を乾かし、櫛で整えて部屋に戻る。そして引き出しから取り出したのは刺繍セット。これを見ただけで笑みが零れてくる。それ程この時間が至福の時なのだ。

「うーん…今日は何の刺繍をやろうかな…」

白地の布を両手でピンと張りながら考える。そしてふと頭に浮かんだのは雨模様の空だった。何故それが浮かんできたのかはわからないが、何となく今日出会った少年みたいだと思った。難易度は高いが挑戦してみるかと意気込み、無我夢中で針を右手に持った。

戀の日常5→←戀の日常3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:片思い , 刺繍   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜音羽 詩葉 | 作成日時:2018年2月16日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。