戀の日常4 ページ4
「ん、今日は良い出来かも」
自分の作った料理を自画自賛しながら口に運ぶ。何ともまあ悲しい光景だが、話す人がいないのだからしょうがない。大学に通う様になって3年目。一人暮らしも3年目。家族と話せないのは寂しいが、生活面では少し厳しかった祖母の目が届かないアパート暮らしはそこそこ充実している。何せ好きな事を好きな時に出来て夜更しも出来るのだから。
「ふー、ご馳走様」
すぐに食器をキッチンに運び、スポンジを手に取り洗剤を付ける。柑橘系の匂いが鼻腔を刺激した。泡に包まれた右手の中にあるスポンジで皿に付いた汚れを落とし、お湯で洗い流してフキンで水気を拭き取る。小さな食器棚にそれを丁寧にしまい、さっさとやる事を済ませようとお風呂の準備をするために部屋に戻った。タンスからお気に入りのピンク色のパジャマと下着、バスタオルを持ちバスルームに向かう。脱衣場にある洗濯機の上に着替えを置き、脱いだ服を洗濯カゴの中に入れ浴室に入りシャワーの蛇口を捻った。
「冷た!」
誤って体に思いっきりかけてしまった。一気に寒さが襲ってくる。早く温かくなれと思いながら待っていると、5秒程して
「うーん…今日は何の刺繍をやろうかな…」
白地の布を両手でピンと張りながら考える。そしてふと頭に浮かんだのは雨模様の空だった。何故それが浮かんできたのかはわからないが、何となく今日出会った少年みたいだと思った。難易度は高いが挑戦してみるかと意気込み、無我夢中で針を右手に持った。
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作者名:桜音羽 詩葉 | 作成日時:2018年2月16日 13時