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何も始まってないし何かした覚えもないから、単純に私と合わないって思われてるんだなって、好意を持ってる分落ち込んだ。
合わなかったとしても他のバイトの子みたいに仲良くもなれないのかなって思うと、単純に悲しかったけど、せっかく始めたバイトをそんな事で辞めるのも違うし、拓哉くん以外の人とは変な壁も無く仲良くしているから、もう拓哉くんとこれ以上仲良くなるのは諦めて程よい距離感でバイト付き合いをするしかないなって、そんな風に思ってた矢先の出来事に心臓はギュって痛くて悲しくてこれ以上拓哉くんを見ていたくなかった。
半個室のような私達の団体のスペースを抜けてトイレの手前の待合室みたいな場所の隅で膝を抱えて小さくなってると待合室の引き戸が引かれて誰かが入ってきたから入り口に目を向けると拓哉くんが立ってた。
「こんなとこにおったんや?・・・どしたん?気分悪なったん?」
そう言いながら近づいてくる拓哉くんに「こっち来ないで」って思わず口にしたけど無視して私の隣に腰掛ける。
「酒飲んでへんよな?しんどいん?」
「・・・・拓哉くんに関係ないから・・・・放っておいてください」
心配そうな顔を向けて問いかける拓哉くんから視線を逸らしながらそう返すと「長もっちゃん・・俺の事好きやから、さっきのキス見てショックやったん?」なんて、普通のテンションで当たり前のように言われて思わず目を見張る。
「・・・・・別に私拓哉くんの事好きじゃないです。・・・キスとか・・した事無いんで人前で出来る神経はわかんないです」
精一杯の強がりで平然と返してみたら急に拓哉くんが笑い出して、なんか馬鹿にされた気分になって「何笑ってんの?・・拓哉くんモテるからって私の事馬鹿にしすぎです」って苛立ちを隠すことなく怒ると、拓哉くんはまだニヤニヤしてて「わかったわかった・・・馬鹿にしてへんけど笑ってごめんな?」って謝りながら私の後頭部に手を回してきてその手を引き寄せながら唇を重ねてきた。
避けようと思えば避けれたのに、私の思考回路は全然機能してなくて、拓哉くんのそれを何の抵抗もすることなく受け入れてた。
初めてのキスをする時私の目に映ったのはさっきまでのからかうような顔じゃなくて、物凄く真剣な瞳が私を見ていて、その瞳と視線がぶつかった時、この人の事が好きだって強く思ってしまった。
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作者名:あお | 作成日時:2024年2月21日 16時