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「紗綾送りに来たらおばちゃんがご飯食べてけって」


携帯から視線を外さずに言う独り言のような斗亜の言葉を、まだ状況がつかめない頭でぼんやり聞いてると「・・・俺めっちゃおばちゃんに気使われたわ。おばちゃんが風雅呼んだからって。・・・・風雅が勝手に来たんじゃないって言いたかったんやろな。・・・幼馴染なんやし今更やのにな?」これも独り言のように斗亜の口から洩れた。

そう、明るい爽やかな感じで話す口調とは裏腹に、三人掛けのソファーで寝転んでる俺の横にちょこんと膝を立てて座る斗亜の顔は変わらず無表情で、何とも言えない気まずさを感じた。






斗亜の手元の携帯ゲームの音楽が微かに流れ、リビングの奥のキッチンから紗綾とおばちゃんの声が聞こえる。
だけど俺らの間にはまるで無音の空間のようにシンと静まり返ってる。





「さっき・・・風雅彼女居るっておばちゃん言うてたで?・・・ほんまなん?初耳ねんけど?」
「うん・・・言うてへんかったな。・・・・居るで?」


寝転んだまま答えたから俺の視線は部屋の天井を仰いでて、視界の隅に映る斗亜の顔が携帯からこっちにゆっくり動くのが見えた。





「・・・・その子と紗綾と・・・どっちが好きなん?」
「どっちって・・・・そら彼女やろ。・・・付き合ってんねんから」



こっちを向いてる斗亜に気付いているけど、その視線をどうしても合わせることができなかった。






萌が好きとか、紗綾の方が好きとか、もうそんな好きだ嫌いだの話じゃなくて、この気まずい空気になってる俺らの関係性が嫌すぎて全部丸めて捨てたい気分になる。

いつからこんな気まずい関係になってんのかと考えてみるけど、特別何があったとかじゃなくて、きっと少しづつ誤魔化し続けた何かが俺と斗亜と紗綾の間に見えない溝を作っていた。

俺の言葉が足りなくて、きっと斗亜にも紗綾にももどかしい思いをさせてしまっているんだって思ったけど、何をどう伝えたら届くのかも正直わからなかった。





しばらく続いた無言に斗亜が一言、そっか・・・って溢して俺の隣から立ち上がる。
そのままキッチンの方へ向かっていって、手伝う事あるかと尋ねる斗亜の声をぼんやり聞いていた。




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作者名:あお | 作成日時:2024年1月9日 17時

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