第十八訓 甘味には呑まれるな ページ4
【side．A】
「兎に角、Aさんは一人で出歩かない事！
私が狙われているという事で、十個程年下の新八君にそんな心配事をつらつら並べられた挙句、暫く万事屋に寝泊まりさせて貰う事になってしまった。
うーん、私もそんなにか弱い訳じゃ無いんだけどな。これからお世話になる事となる万事屋を見渡して溜息をついた。
それよりも万事屋の皆に迷惑をかける事の方が私にとっては余っ程酷だ。もし仮に、彼らが命の危機に晒されたとしたら…その時は黙って出て行くしかない。
…が、まずはこの頑固娘を何とか言いくるめなければ。
「A姉は銀ちゃんのベッドで寝るアル！ソファなんか駄目に決まってるネ！！」
「だーから、私は布団なんて借りる気無いってば！そんな上質な物無くたって私寝れるから！攘夷戦争時代は砂利の上でだって寝れたんだって！」
「A姉がこんなダメ男の為に布団を譲るってのが我慢ならないネ！！」
「私は居候させて貰ってる身だからね！？」
現在、神楽ちゃんと私は何処で寝るか論争を繰り広げていた。
神楽ちゃんは銀時の布団を私に使わせようとして譲らず、かと言って私も居候している身なのに布団まで提供される訳にもいかず。
銀時にも悪いし、ここは譲る訳にはいかない。さァどうしたものかと思っていると、既に蚊帳の外の当の布団の持ち主がオイオイオイ、と割って入ってくる。
「神楽、一応言っとくな？多分忘れてると思うからね。この布団って俺のな、だから決定権は俺にあると思うんだけども」
「お前の意見なんて誰も求めてねんだヨ引っ込んでろヨ！」
「何でだよクソガキ！！……ま、Aが俺の部屋で寝るのに反対するつもりはねーよ」
「え？」
結局銀時も私に布団を使えだ何だと言い出すのか。布団で寝る気なんてないってば、と返そうとした。
が、声を出す間も無く銀時に腕をぐいと引かれ、自身に私を凭れさせるよう後ろから抱き抱えられた。
「……ん！？」
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作者名：黒胡桃 | 作成日時：2023年5月6日 14時
