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【side．A】
「旦那方ー、こっちです」
総悟君に案内されたのは江戸の端にある港だった。海風の塩っぽい匂いに大型船の煙が混じって臭い。
その港の裏道を幾つも潜り抜けた先には小さな店があった。
中に入ってすぐ、妖しげな色の空気を吸った。水晶のような物から汚いボロ雑巾に似た何か、萎れた本に異様に長い杖。色々な物をごちゃ混ぜにしたような店。
ステンドガラスの色彩を通して降る光があちこちに落ちて、奇妙な感じ。ジブ〇に出てきてもおかしくなさそうだな、ウン。
「足元気ィ付けて下さい、変なモン色々転がってるんで｣
「うえっ、埃臭ェ」
新八君が傍で「ヘックショォォイ！！」と盛大なくしゃみをする。汚いアルと叫んだ神楽ちゃんが新八君と距離を置いていたが、確かに辺りは埃まみれだった。
私は匂いを嗅げないから分からないが、銀時も臭さに鼻を摘んでいて、足元にある骸骨をぎょっとして避けながら続けた。
「で、総一郎君、此処何？なんか気持ち悪ィんですけど帰りたいんですけど」
「だから総悟だっつってますよねィ？あー、詳しい事はザキが知ってまさァ」
総悟君が親指で指す先には、真選組の隊服を着た、黒髪の如何にも目立たなさそうな男が立っていた。
「ジミー君じゃん、居たの」「ずっと居ましたよ！？冗談よして下さい」、銀時とその人の会話が始まる。いや私も居たの気付かなかった。びっくりした。
「ハイハイ僕は影が薄いですよ知ってますよもう！……で、えーと貴女がAさんですか？初めまして、山崎退です」
「あ、はい、初めまして。八劔Aです」
山崎と言ったその人は報告書と書かれた物をペラペラと捲り始めた。時々あんぱんという文字が羅列された呪いのようなページが見えたが、気のせいだろう。流石に。
「ホラ、僕ってあんまり目立たない部類の人間でしょ。さっきも言われしたけどね！だから偵察が主な仕事となってるんです。今回も沖田隊長に言われて此方の店を偵察してたんですよ」
「偵察？」
「悪い密輸の噂が立ってまして。中には奇妙な鈴の売買を目撃した人もいるとか」
「！」
私も銀時も目を見開いた。鈴……成程ね。
その鈴が、私の味覚やら感覚やらを持っていった異類の鈴だったと。
いいんじゃない、鈴の音野郎に近付いてる。鈴の音野郎、絶対ぶっ潰すからな…私に喧嘩売ったんだもんねェ？
続く (更新停止中)
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←第二十訓 思い出せそうで思い出せない事はよくあるのに結局思い出すという結果になる事はそんなにないから嫌だ
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作者名：黒胡桃 | 作成日時：2023年5月6日 14時
