第十七訓 情報は時に命より大切だって誰かが言ってた気がする ページ1
【side.A】
前回のあらすじ___
味覚障害を患った私は万事屋一行と共に、銀時の知り合いである真選組に手がかりを探しに出向いた。
私のマインドコントロールの技術により見事真選組を手駒とした私達は、五感に障害を患った者が行方不明になるという謎の事件の話を総悟君から聞く事となったのである___
「旦那方ー、お待たせしやした」
古びた木材で造られた縁側。体を動かす度に木が軋む音がして、木材の匂いが霞む。
総悟君に「ちっと待ってて下せェ」と言われたその縁側で腰掛けていると、数刻もしない内に総悟君が帰ってきた。総悟君は本を持っていて、私が何それ、と聞くより早くその本を渡された。
「あの事件の資料でさァ。資料は通常外の野郎にゃ見せちゃならねェんですがねィ。ま、責任は全部あのクソマヨに行くんで気にせず見てって下せェよ」
手に持ってみると、本は案外軽く新しめだ。最近起こった事件という事なのだろう。
それでも一つ一つの事件の詳細を丁寧に纏めてある。かなり有益な情報だ。うん、ポリ公も伊達じゃないね。銀時も強い人脈を得たらしい。
資料のページを捲る。そこにはこう記されていた。
五月二十七日、三浦屋にて亭主・三浦清明が行方不明となる。
三浦屋は甘味屋であり、清明は食道楽で知られていた模様。しかし事件一週間前、その味覚に変化があった。以下は三浦清明が妻、三浦美也子の証言である。
「ある日、夫の味覚がおかしくなりました。食べ物全ての味が分からなくなったと言うんです。何かの冗談にも見えず、かと言って医者に行ってどうにかなるものでもありませんでした。
三日後、更に夫の状態がおかしくなりました。今度は痛みも感じられなくなったらしいのです。客の暴行で腕が折れても何も感じなかった様でした。
それからも夫の状態は悪化する一方でした。今度は夫の記憶さえ曖昧になってしまって…私の事さえ、忘れてしまったようでした。
何時からか感情も消え失せ、最早廃人と化してしまった。私は何をしてやれば良いのやら、何も分からなかった。一つ一つ、夫の何かが消えていって夫が夫じゃなくなる様を見ている事しか出来なかった。そんな時に、夫が突然行方を晦ましたのです。
夫が最後に残した言葉がこれです___『鈴の音が、呼んでいる』」
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作者名:黒胡桃 | 作成日時:2023年5月6日 14時