過去編第一話 ページ40
桶の温くなった水を棄て冷たい水と交換する。
空を見上げれば自分の心のように暗く澱んでいた。
このままでは駄目だと伊作は両頬をぺちんと叩いた。
(そうだ、くよくよしてどうする)
僕までめげたらお仕舞いだ。
しっかりしなくては。
(Aちゃんも頑張ってる)
「っと、時間空きすぎたかな」
今は留三郎が診てくれているけど……。
そろそろ戻らなきゃと思い保健室の襖を開けて伊作は入れ換えたばっかりの桶をガタンと落とした。
「嘘……」
留三郎の手に握られた手は既に力を失っていた。
「伊作、さっきな………逝っちまった」
パタパタと床に水が滴った。
そんな、と思うと同時に自分がどこか
助からないだろうと胸のどこかで悟っていた。
(ごめんね、Aちゃん)
出来る事はしたのだ。背一杯。
「なあ、A、俺の事がずっと好きだって言ってたんだ」
「そっか…………」
留三郎の顔は見ずに返答する。
きっと見られたくないと思うから。
「俺……ずっとずっと、あいつの事好きだったんだ…………！
馬鹿だよな、こんな時に気付くなんてよ」
ぎゅっとAの手を握りしめた。
「馬鹿だね、ほんと、二人ともさ」
こんな形で両思いになるなど、悲しいものがあるだろうか。
もうじき夜が明ける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メクルクル(プロフ) - ひろくんさん» コメントありがとうございます、 泣いてくださるなんてこちらこそ嬉しさで泣いてしまいます…… (2021年1月6日 19時) (
レス) id: f8b718fdc2 (このIDを非表示/違反報告)
ひろくん(プロフ) - とても好きです。読み返す度に泣いてます…涙なしには見れない奴ですよ…とても好きです… (2021年1月5日 12時) (レス) id: 0df5293f1e (このIDを非表示/違反報告)
メクルクル(プロフ) - 華さん» 催促とコメントありがとうございます、細々とですが更新はしていくつもりです！ (2020年3月29日 16時) (レス) id: f8b718fdc2 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 早く続きがみたいです！楽しみにしてます！ (2020年3月29日 1時) (レス) id: 5089320bde (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - とても面白いです！更新頑張って下さい！ (2019年8月21日 18時) (レス) id: 783e5088c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メクルクル | 作成日時：2019年4月26日 23時
