千空短編小説3 (ページ1)

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せめて一度だけでもページ1

高校一年生の秋。
慌ただしい文化祭で出し物やらで滅入っていたが今日は待ちに待った後夜祭だ。
アーティストのライブ等もあるが私が狙っているのはそっちではない。
フォークダンスだ。
キャンプファイアーの周りで踊ったりするのだが思春期の高校生にとっては大事なイベントの一つだ。
フォークダンスは男女が手を繋ぎ踊る。
すなわち強制的に手を繋がねばならない。
意中の人と急接近する事が可能なのである。
かくいう私も今回のイベントで手を繋ぐチャンスをいまかいまかと待っていた。
その相手とは科学部部長の石神千空という。
友人なので仲が悪いというわけではないが、手を繋ぐとなると話しは別だ。
恋人でもないのに手を繋ぐなど到底無理な事。
クラスが変わればそれは叶わなくなってしまう。
せめて、今夜だけでも。
フォークダンスは音楽に合わせて踊るが曲が変わると逆を向かなければならない。
練習でも千空の目の前で方向が逆方向になったり急に先生の指導か入ったりで千空とは何故か一回も踊る事は出来なかった。
私は呪われているのだろうか。
「手を繋ぎたいだけなのになあ」
噂ではフォークダンスで気持ちが通じあった男女は結ばれると言われているけど。
そんなの私には程遠い淡い夢だ。

そろそろ本番の時間だ。
練習と同じ配置に立ちちらりと千空を見ると相変わらず仏頂面だった。
フォークダンスの時は何故か機嫌が悪い。
まぁ、ダンス嫌いそうだし察しはつくけど。
いいなあ、千空の隣の子。
音楽が鳴るまで手を繋いだまま待機してなきゃいけないから。
隣にいる女子に嫉妬してしまう。
何度変わってくれないかと思ったことか。
曲が流れ周りに合わせて体を動かした。
でも心は我知らずでふわふわ浮いている。
ただただ千空の様子が気になるのだ。
そしてやはりタイミングよく千空と手を繋ぐ前に曲が変わってしまう。
このままでは練習と同じだ。
手を繋げないまま終わってしまう。
一瞬だけでもいいから、と強く願ったお陰かようやく順番が回ってきてくれた。
言葉を交わさず背中越しに両手を繋ぐ。
汗かいたから気にしないかなとかたくさん心配だったはずなのに今は胸が苦しい。
ステップを踏むのも精一杯。
顔が熱い、きっと火にあてられたせいだ。
千空はどんな気持ちなのかな？