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【もう逃げない】 ページ17

「あのね、僕は、また君と一緒に
 歌いたいんだ。」

『何言ってんの…私は歌わないよ』

「練習の時とか一緒に歌ってくれただろう?」


ライブ中も口ずさんでいたの知っているよ、と言われた時
ボッと顔を熱が集まるのがわかった。


『…みてたの』

「もちろん、アイドルだからね」

『…そっ』

「もう一度だけ、君の歌を
 歌うチャンスをくれないかい?」

『私は、あの時からうまく書けなくて
 多少戻ったとはいえ
 完全に復活したわけじゃない』


また、いつ書けなくなるかもわからない。


『それでも、歌いたい?』

「もちろんさ、Aが書いた曲を
 歌いたい。」

『…』


それでも、少しだけ
英智を信用してないとかそういうんじゃない

だけど、あの時がよぎってしまう。


「…君が納得いかない曲なら
 僕がそれを完璧にしよう」


英智はそう言った。


「次は、君が作った曲を
 誰かを傷つけるためだけじゃなくて
 
 ___みんなを幸せにするために歌う」


みんなを幸せにするために…。


「みんなの"平和"を守るためにね」


僕がこんなこと言っていいのかわからないけれど、とぎこちなく笑う。

刹那、涙が溢れた。

英智は、一瞬ギョッとしたが
席を立って、私を優しく包み込んだ。


「ごめんね、僕は素直じゃないみたいで
 ちゃんとこうやって伝えるのに
 こんなに時間がかかっちゃった

 あの時のこと、後悔してる
 なんで、あんなことを言ったんだろうって
 でもね、いつまでも引きずっていても
 変われないって…恥ずかしい話だけれど
 渉に言われて気づいたんだ。」


優しい言葉に、英智の本心に
私は涙を止めることができなかった。


「だからね、僕はもう逃げない。

 もう一回、一緒に歌ってくれないかい?
 それから、…こんなこと言っていいのか
 わからないのだけど…」


英智は言葉を詰まらせた。
そして、ふーっと息を吐くと
私の頬を包み込んで目を合わせる


「A、昔も今もずっと」







「ずっと好きです。
 こんな僕だけど付き合ってくれませんか?」

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作者名:友梨奈 | 作成日時:2021年8月13日 23時

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