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「元太、ご飯できたよー。」
元「はあい。」
ママの声で、ぼんやりした意識が一気に現実に戻される。台所に向かって返事をして、立ち上がったときだった。
ガタガタと嫌な音がして、兄ちゃんのベッドの方を振り向く。さっきまで穏やかだった兄ちゃんの顔は苦しそうに歪んでいて、全身が大きく震えていた。
元「…っママ!兄ちゃん、発作!」
俺の声で、ママが和室に駆けつける。
兄ちゃんは、たまにこういう痙攣発作を起こすことがある。落ち着くまでは見守ることしかできないから、俺は小さい頃からそうしているように早く発作が治まることだけをひたすら心の中で祈っていた。
如「…っうぅ、あ、」
しばらくすると体の震えは治まって、兄ちゃんは小さな声を上げた後すぐに眠ってしまった。ほっとしたのか、俺の隣でママがへなへなと座り込む。
「……やっぱり、薬の効きが悪くなってる。」
絞り出すような声でそう言うと、ママは両手で顔を覆った。
痙攣発作を抑える薬がいまいち効かなくなってきたことは、俺も聞いていた。でも、それが本当だって確かに実感したのは、今日が初めてだ。俺がちびの頃は、むしろ発作自体珍しいくらいだったのに。
元「……兄ちゃん、」
静かに眠り続ける兄ちゃんの顔に、そっと手を添える。兄ちゃんはママと同じように鼻筋が通っていて、きれいな顔立ちだ。眠っていると、それが余計にはっきりわかる。
今はなんだかそのきれいさが怖くて、スゥっと消えて行ってしまいそうな気がして、俺は両手で兄ちゃんの顔を包み込んでいた。
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おさと(プロフ) - ましろさん» ましろ様、こんばんは!なんて嬉しいお言葉…!本当に、本当にありがとうございます😭相変わらずダメダメな作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。 (2022年10月9日 18時) (レス) id: d4db3ebcdb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - おさと様、本当に本当にありがとうございます!とってもとっても素敵です😭拙いリクをこんなにも素晴らしいお話にしていただけて感無量です...おさと様と出会えて作品を読ませていただけて幸せです...これからも作品を本当に楽しみにしています!大好きです!! (2022年10月8日 21時) (レス) @page25 id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - ぺえさん» ぺえ様、今回も素敵なリクエストをありがとうございました!いつもコメントありがとうございます。本当に励みになります😭よければぜひ、今後もお付き合いいただければ嬉しいです! (2022年10月5日 22時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました!!おさと様の作品ほんとに大好きなので、これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月4日 21時) (レス) @page24 id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 〇〇さん» ○○様、コメントありがとうございます!嬉しすぎて、リアルに泣いてます😭良い実習となるよう、また目標のご職業に就けるよう心から応援しております!どうかお体に気をつけて頑張ってください!! (2022年10月1日 18時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年9月24日 20時