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如恵留、如恵留、と遠くから声が聞こえる。



スマホの目覚まし以外の音で起きるのは久しぶりで、俺は寝ぼけた目をこすりながら体を起こした。




「元太、起きろ!如恵留が、!」


ノックもなしに部屋のドアが開いて、まだパジャマ姿のパパが飛び込んでくる。それだけで、何か大変なことが起きたんだとわかった。





元「…っ兄ちゃん!」


階段を駆け下りて、いつもの和室に飛び入る。兄ちゃんは、ベッドの上であごを上げて手足を震わせていた。体は反りかえっていて、ぱっと見ただけでよっぽどひどい発作だと分かる。



元「救急車は!?」

「呼んだ、もうすぐ着くはず。」


切羽詰まったママの返事を聞いたのとほぼ同時に、サイレンの音が近づいてくる。それからはあっという間で、兄ちゃんとママは救急車に乗ってすぐに病院へ向かった。




俺とパパは、車で後を追うことにした。俺は少しお酒が入っていたから、代わりにパパが運転してくれる。


車の中で、俺は最近パパが晩酌をしなくなっていたことに気づいた。もしかしたら兄ちゃんの発作が増えていることを考えて、ずっと“もしも”に備えていたのかもしれない。



俺だけが、兄ちゃんのことを考えられていなかった。それが恥ずかしくて、申し訳なくて、俺は病院に着くまで声を出さないように泣いた。








兄ちゃんが運ばれた病院は、いつもお世話になってる大学病院だった。夜中なのにきちんと対応していただけてありがたい、とパパが固い表情のまま言う。



「ご家族の方、こちらへどうぞ。」


看護師さんに呼ばれて、パパとママは診察室に説明を聞きに行く。俺は迷ったけれど、発作が落ち着いたらしい兄ちゃんのそばに行くことにした。




元「…兄ちゃん、大丈夫?」


他の患者さんとかもいない、特別な病室。暗くて、静かで、冷たい。



俺はベッドのそばにある丸椅子に座って、眠っている兄ちゃんの点滴がつながっていない右手を握った。

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おさと(プロフ) - ましろさん» ましろ様、こんばんは!なんて嬉しいお言葉…!本当に、本当にありがとうございます😭相変わらずダメダメな作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。 (2022年10月9日 18時) (レス) id: d4db3ebcdb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - おさと様、本当に本当にありがとうございます!とってもとっても素敵です😭拙いリクをこんなにも素晴らしいお話にしていただけて感無量です...おさと様と出会えて作品を読ませていただけて幸せです...これからも作品を本当に楽しみにしています!大好きです!! (2022年10月8日 21時) (レス) @page25 id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - ぺえさん» ぺえ様、今回も素敵なリクエストをありがとうございました!いつもコメントありがとうございます。本当に励みになります😭よければぜひ、今後もお付き合いいただければ嬉しいです! (2022年10月5日 22時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました!!おさと様の作品ほんとに大好きなので、これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月4日 21時) (レス) @page24 id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 〇〇さん» ○○様、コメントありがとうございます!嬉しすぎて、リアルに泣いてます😭良い実習となるよう、また目標のご職業に就けるよう心から応援しております!どうかお体に気をつけて頑張ってください!! (2022年10月1日 18時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさと | 作成日時:2022年9月24日 20時

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