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「元太、起きなさい。」
肩を軽くたたかれて、はっと顔を上げる。
カーテンから透ける光がぼんやり病室の中を明るくしていて、疲れた様子のパパとママの顔を浮かび上がらせていた。
「如恵留ね、しばらく入院になるんだって。」
元「…そう、なんだ。」
びっくりするくらい頭がぼーっとしていて、薄い反応しか返せない。俺は、まだ半分夢の中にいるような気分のままベッドの方に目を向けた。
元「ほんとに、夢だったのかな。」
頭の上に手を乗せてみると、本当に少しだけ温もりが残っている気がした。優しい体温と、パパと同じようにごつごつした手の感触。
元「…俺、兄ちゃんに言われたんだ。元太、ありがとうって。」
ありえない、と笑われると思ったのに、パパもママも何も言わなかった。家族の間に、静かな時間が流れる。
ありがとう、なんて言われるようなこと、俺は何もしていない。むしろ俺の方こそ、ありがとうだ。
俺が色んなことを話しているとき、兄ちゃんはきっとものすごく真剣に、そして優しく聞いてくれてるんだろう。ほんの短い時間だったけど、じっと俺の目を見て笑顔で相槌を打ってくれていた兄ちゃんの姿がそれを証明してるように思えた。
元「…兄ちゃん、いつもありがとう。これからも、ずっと一緒だからね。」
寝ている兄ちゃんからの返事はないけれど、平気だ。今まで聞いてきた声より少し高くて、想像以上にはきはきしていた「ありがとう」が、まだ俺の耳に残っているから。
如「……んぅ、」
元「お、兄ちゃん起きた?おはよう。」
ぱちぱち、と兄ちゃんがまばたきをする。
どこか遠くを見るようなその目に、カーテンの隙間からこぼれた朝日がきらきらと輝いていた。
「短夜の夢」fin.
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おさと(プロフ) - ましろさん» ましろ様、こんばんは!なんて嬉しいお言葉…!本当に、本当にありがとうございます😭相変わらずダメダメな作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。 (2022年10月9日 18時) (レス) id: d4db3ebcdb (このIDを非表示/違反報告)
ましろ - おさと様、本当に本当にありがとうございます!とってもとっても素敵です😭拙いリクをこんなにも素晴らしいお話にしていただけて感無量です...おさと様と出会えて作品を読ませていただけて幸せです...これからも作品を本当に楽しみにしています!大好きです!! (2022年10月8日 21時) (レス) @page25 id: 7d488f5410 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - ぺえさん» ぺえ様、今回も素敵なリクエストをありがとうございました!いつもコメントありがとうございます。本当に励みになります😭よければぜひ、今後もお付き合いいただければ嬉しいです! (2022年10月5日 22時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
ぺえ(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました!!おさと様の作品ほんとに大好きなので、これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月4日 21時) (レス) @page24 id: 8c7e5fe0be (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - 〇〇さん» ○○様、コメントありがとうございます!嬉しすぎて、リアルに泣いてます😭良い実習となるよう、また目標のご職業に就けるよう心から応援しております!どうかお体に気をつけて頑張ってください!! (2022年10月1日 18時) (レス) id: 31d1894405 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年9月24日 20時