【文スト】出会いは吐き気から。

#11 ページ11

横濱の夜は様々な輩が彷徨いている。







「嬢ちゃん仕事帰りぃ？一杯お兄さんとどう？」







此処に住んでから何度絡まれたことだろうか。




社畜といっても過言じゃない激務から開放されて帰宅できる心境を思い知ってほしい。









『遠慮しておきます』


「釣れないなぁ…俺が奢るからさぁ、だめぇ？」







甘ったるい声で誘いをぶっかけてくる男の表情は笑ってはいるが、目が全く笑っていない。

それに酒臭い。




上から下まで舐めるように見る視線が気持ち悪い。




意を決めて言い放つ。







『関わらないで下さい！』




「おい逃げんなよ…！」





手首を掴まれてしまう。

男の力はあまりにも強くて、グッと痛みが走った。その痛みのあまり苦痛に顔を歪める。





「このまま骨折ってやろうかッ！？言う事を聞けば残してやる！」





ぐぐ…ッと強められる。

怒鳴り散らかす男の豹変した顔つきは異常だ。






『ぁ、…っ』







正直、怒鳴られるのは嫌いだ。

身体が竦んで脳内が真っ白になる。
喉から乾いた母音が零れた。






「カウントダウンしてやる…その間に決めろ」


『い…ぁ、ッ…っ』






手先の感覚が痺れてきた。じわじわと広がる痛み。

本当に大変な状況だ。












人気のない帰路だから、誰も気づいてくれない。



どうしよう、どうしようどうしようどうしよう。








「5…4…」









誰でもいい、お願い





聞こえてるなら＿＿＿









『＿＿助けて…ッ…！』

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