参拾陸 ページ37
組合の奴らは社長室に入っていった
ちょっと聞いちゃおうかな…
私は静かな給湯室へ移動し、耳を済ませた
「この会社を買いたい」
『!?』
この武装探偵社を…買収?
何を巫山戯た事を言っているんだ
「勘違いするな。俺はここから見える土地と会社すべてを買うこともできる。この社屋にも社員にも興味はない。あるのは1つ」
「……真逆」
「そうだ……
“異能開業許可証”を寄越せ」
『異能開業許可証……?』
なんだろうそれ…
「この国で異能者の集まりが合法的に開業するには、内務省特務課が発行した許可証が必要だ特務課の石猿どもだけは買収できない
連中を敵に回さず大手を振ってこの街で“探し物”をするには、その許可証が…」
「断る」
重々しい社長の声が聞こえた
だが相手はまさか断られるとは思ってなかったようで中々引き下がらない
「命が金で買えぬように…許可証と替えうる物など存在せぬ。あれは社の魂だ。特務課の期待、許可発行に尽力して頂いた夏目先生、そしてあの人の想いが込められている。
頭に札束の詰まった成金がそう易々と触れていい代物ではない」
そんなに大切な物なのか…
夏目先生…?あの人って誰だろ…
「御引き取り願おう」
「チッ……何処迄も目障りな奴だ。まあいい…君がいくら強がっても、“社員が消えてしまっては会社は成り立たない”そうなってから意見を変えても遅いぞ」
脅しか…
「御忠告心に留めよう。帰し給え」
その直後、社長室の扉が開いた
賢治君がお見送りをするようだ
「明日の朝刊にメッセージを載せる。よく見ておけ親友、俺は欲しいものは必ず手に入れる」
そう言い捨てて組合は帰って行った
なんだろう、まだ胸騒ぎが収まらない
『…!』
私はある事に気付き、急いで1階へ降りた
廊下には、賢治君の麦わら帽子が落ちていた
『やられた…!』
翌日、7階建てのビルが文字通り消滅した
「おい!朝刊見たか‼」
国木田さんが新聞を片手に慌てて入ってきた
「報道でもやってるよ」
そのビルにはポートマフィアのフロント企業が入っていたらしい
なるほど、これがメッセージか…
結局、賢治君は社員寮には戻ってこなかったらしい
「それにしてもAさんよく気付きましたね」
敦が不思議そうに私に聞いてきた
『あいつらが帰って少ししたら賢治君の匂いが消えたからね…嫌な予感はしたんだよ…』
「逆らう探偵社も用済みのマフィアも全て消す、か…」
受けて立とうじゃないか、組合
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作者名:やきなす | 作成日時:2020年11月10日 11時