カクテルは錯覚する ページ5
「興味が無いなら聞き流してくれ給え。だがね、我が盟友なるリーリャ。私はどうにも納得いかないのだよ。つまり、何故私ではなく彼奴なのかという事だがね」
「納得いかないっていうのは、前にナーシャが楽しそうに話してたあれ？えーと、なんて言ったか……最強の兵士を作り出すプロジェクトだっけな」
「軍事的価値のある混血種の発明、だ」と呟き、アナスタシヤはウォトカの瓶に手をつけた。グラスを傾けるその横顔は、数ヶ月前に会った時とは対照的に悲しげだった。あの時は確か、国の行く末に関わる重大な仕事を任されたと嬉しそうにしていた筈なのだが、何か問題でもあったのだろうか。
物語の続きを考えるのにもいい加減疲れていたリーリヤは、息抜き程度にこの友人の話を聞く事に決めた。どの道、朝日が昇るまであの狭苦しい共同住宅に戻る気は無い。
「君にも危険が及ぶ可能性のある情報漏洩スレスレを犯しておきながら、こんな泣き言を言う私を許してくれ。簡潔に纏めると、初動となる第一実験は失敗に終わった。被験体である猿が病気に罹ってしまってね。運の悪い事に伝染性の物だった。おっと、人には感染らないから安心してくれ。その病気によって四匹が持ち帰って一週間で死に、今日の昼に唯一残った一匹も眠った。安らかとは言えない永眠だったな。アフリカまでの移動費やウイルスを殺す為に投与した薬の所為で、私の資金は底をついた。もう一度実験をしようにも不可能なんだ」
「それは確かに不運だったねえ。でも其処は、ナーシャにご執心の同志が資金援助してくれるんじゃないの？」
リーリヤは至って真面目な顔でそう言った。だが、肝心のアナスタシヤから帰って来たのは____溜息。
「どうだか。私は同志にとって、どんな実験でも快諾する都合の良い駒でしかない。今回だって、猿の全滅を報告したらいきなり電話を切られたよ。見放されたんだ。今までなんとか発明を成功させて同志に目をかけられて来たが、それも今日で終わりだな」
また大きな溜息を吐き出し、アナスタシヤはグラスに半分残ったウォトカを一気に呷る。まるで毒でも飲もうとしている人間の様な悲痛な瞳に、リーリヤは返す言葉を選択し損ねた。どうやら、今回はただの愚痴ではなく本物の危機のようだ。
アナスタシヤは科学者、また動物学者として有能な人物だったが、中々機会に恵まれず長い間貧乏研究者として生活して来た。そんな彼女につい最近になって目をつけたのが、他ならぬこの国のトップだった。
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十弧(プロフ) - ナ子さん» コメント有難う御座います。身に余るお言葉を頂けて嬉しい限りです…！殆ど好きだけで書き殴っているのでまだまだ至らぬ点など多々見られると思いますが、楽しんで頂けたようで作者冥利につきます。不定期更新ですが、これからも何卒宜しくお願い致します！ (2019年1月19日 15時) (
レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ナ子 - 読ませていただきました…こんなに面白い文章を書ける人がいたなんて…と少々驚いています。舞台となっているロシアについても細かく描写されていて尊敬します。これからも頑張ってください！ (2019年1月19日 9時) (レス) id: 5e3a342151 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - 白林檎さん» コメント有難う御座います。そのような温かいお言葉を頂けて嬉しい限りで御座います…！一次創作は初めての試みで慣れない事もありますが、楽しんで頂けて幸いです。これからもご期待に添えるよう精進して参りますので、何卒宜しくお願い致します！ (2018年9月2日 18時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
白林檎(プロフ) - 初コメ失礼します。とても繊細な文章、作者様の語彙の豊富さが垣間見えるようです。占いツクールでこのような良作に出会えたことに感謝します笑 一次創作は中々売れづらいとは思いますが、応援しています。頑張って下さい！ (2018年9月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b3533b2202 (このIDを非表示/違反報告)
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