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A
「潮風が気持ちいいね」
髪を耳にかけながら、Aは言った
海水浴シーズンが終わって、人はまばらだ
砂浜を歩き、波打際まで行くと、Aは急に靴と靴下を脱ぎ捨てて足首までだけど海に入って行った
…こんなに奔放な感じだったっけ…?
A
「千冬もおいでよー」
にこっと笑うA
いや、海、冷たくねぇの?
付き合わないわけにもいかず、俺も海に少しだけ足をつける
千冬
「冷たッ!
お前、冷たくねぇの!?」
A
「冷たいよ
ずっと浸かってたら風邪引くかもねー」
くすくす笑いながら、Aは海から上がると、今度は砂浜に座り込んだ
なんか、今日のAは子供みたいだ
A
「…もうちょっと、ここにいてもいいかな…?」
膝を抱えて俯きながら、Aは言った
お前、何を思って、何を抱えてんだ…?
俺じゃ、力になれねぇのか…?
潮風が冷たい
千冬
「いいけど、風邪ひくなよ」
俺は着てた上着をAに羽織らせると、Aは小さくありがとうと言った
A
「…ぅん、もぅ、大丈夫…」
ボソッとAが言うと、ゆっくり立ち上がった
A
「千冬っ、ありがとう
次、行こう」
千冬
「おぅ…
ん?次…?」
A
「うん、次、行こう」
少しだけ、表情が晴れたように見えた
海から今度は街中へ移動した
2人で街を歩く
どこに向かっているかわからなかったが、街中のとある小さな空き地の前で立ち止まった
じっと、その空き地を見つめる視線はどこか悲しそうだった
千冬
「…A…?」
A
「…そか、もうなくなっちゃったんだ…
そうだよね…
次、行こう…」
俯いたまま、Aは歩き始めた
何も聞けない…
他のどんな景色も音も、入ってきてねぇみたいにみえる
前方の横断歩道は赤
立ち止まる素振りすらねぇ
千冬
「お、おい、Aっ!
信号、赤だぞ!」
A
「…ぇ…?」
慌ててAの腕を掴む
我に帰ったように、俺の顔を見た
千冬
「大丈夫か?
前くらい、ちゃんと見ろよ」
A
「ぁ、ぅん…
ごめん、ありがとう」
今日のお前、なんか見てらんねぇよ…
意を決して、Aの手を取った
千冬
「…道路に飛び出すとか、ガキかよ…
行きてぇとこには付き合うから、手、離すなよ…?」
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神奈月(プロフ) - 凍ったライムさん» ご指摘ありがとうございます。気付かずに申し訳ありませんでした。早急に対応いたしました。 (2022年9月25日 16時) (レス) id: 4cb915c5c4 (このIDを非表示/違反報告)
凍ったライム(プロフ) - コメント失礼します、オリフラついたままになっていませんか? (2022年9月25日 15時) (レス) id: 946d60cede (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神奈月 | 作成日時:2022年9月24日 15時