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「…もうわかんないっ。なんもっ…わかんないっ…!」


嗚咽混じり出た言葉はそれだけ。
情けない。
意味がわからないだろうさとみくんは、それでも何も言わず待ってくれている。


「もう…いやだっ…。こわいっ…いきるの…怖いっ…。」

「…またなんか言われた?」


散々私の話を聞いてきたさとみくん。
ここ最近毎日、1時間以上、仕事が終わるたびに辛くて電話をしていた。
だからなんとなく察したんだろう。


「普通に…考えたらわかるでしょ、って。…よくそれで生きてこれたねって…言われた。」


平気で人を傷つけられる人間の気持ちがわからない。
他人がどう生きてきたかなんてわからないのに、何故その人の人格や、生きてる事を否定できるのか。
でもそんな人間が世の中にたくさんいるのもわかってる。
そんなことにいちいち傷付いてたらやってられない。


「そんな…そいつなんも考えずに言ってんだよ。いちいち真に受けんなって。」


『聞き流しなよ、そんな言葉』

散々言われてきた。
配信なんて仕事をしてるさとみくんなんて、私の比にならないくらい、見ず知らずの人にかけられた言葉に傷つけられているはずだ。


「わかってるよ。」


だからもうこれは八つ当たりだ。


「聞き流しな、って言われても出来ないんだよ!!!!
もう無理。限界。わからない。何が正しいのか、何が間違ってるのか、私が間違ってるのか、向こうが間違ってるのか、私の何が正しいのか、言われてることの中の正しいこともわからない。
もう何もかもわかんない。もうやだ…いやだ…。」


ちょっと前までは、今機嫌が悪いんだな、って流せたこともある。
その人の言葉の中で、正しいことだけ受け止めて、反省してた。
でも、もう今の私が支配されてるのは恐怖。
正しくても、間違っていても、言われていることが全てで、怒られていることが怖くて、正常な判断ができなくなっているのがわかっていた。
上司の言っていることが絶対。
自分が壊れていくのがわかった。


「…A、仕事、辞めていいよ。俺のとこおいで。」


ショックだった。
言って欲しい言葉だったはずなのに、辞めたいはずなのに、優しい彼の口からその言葉を引き出してしまったことが苦しかった。申し訳なかった。


「…さとみくん…っ…ごめ…っ…ごめんなさ…いっ…。」

「A、一回ゆっくり話そう。落ち着いてから。それまではずっと、泣けばいいから。それから考えよう。Aは疲れてるんだよ。」

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唯凛(プロフ) - かかおさん» コメントありがとうございます!お返事遅くなりましてすみません。大好きなアイドルグループ…!?もしや同志様…!?どのグループだ!?と勝手に興奮しておりました。私の好きな曲・歌詞の世界観が少しでも伝わるように表現できていたら嬉しいです。 (2022年4月23日 22時) (レス) id: 00bd452271 (このIDを非表示/違反報告)
かかお - 初コメ失礼いたします。別作品からここへ飛んできたのですが、もう!!ほんとに!!大好きなアイドルグループの歌詞を題材にされた大好きな人たちの物語…最高すぎます!!さらに文章も素敵で…ほんとにほんとに、ありがとうございます!!最高です!! (2022年3月24日 5時) (レス) id: 162bd117a7 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - 雨歌さん» コメントありがとうございます。文章に含められなかったところを書いているところまで読んでいただけて嬉しいです!!色々詰め込みすぎて読みづらいかなーと不安になる時もあるので、文に込めた想いが伝わっていましたら幸いです。 (2021年6月16日 21時) (レス) id: 1df965d2ca (このIDを非表示/違反報告)
雨歌 - 唯凛さんの最後にかいてある言葉にめちゃくちゃ泣きそうになりました()文の書き方も上手いし、キュンキュンして最高でした! (2021年6月2日 16時) (レス) id: ed2ca2f433 (このIDを非表示/違反報告)
唯凛(プロフ) - みなさん» みなさんこんなところまでありがとうございます〜!!曲イメージで書くのが好きなのと、向こうの夢主ちゃんのキャラでは難しいものとか、思いついた時用に作ってしまいました〜(°▽°) 見ていただけてとっても嬉しいです〜!! (2021年1月2日 14時) (レス) id: b5bb78bb55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:唯凛 | 作成日時:2021年1月2日 12時

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