11話 ページ12
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青いジャージに腕を通す。廊下は暖房が効いて暖かく、窓の外では粉雪が太陽の光を反射させていた。ノックをして扉を開けると、まだ朝だというのに如何にも高カロリーという色を纏った焼きそばの香りが漂ってくる。
「Aちゃんお帰りー。これ頼んで良い?」
『ヤです。それくらい自分でやってください』
絵心さんは「じゃあ遅刻した罰」と言って空のカップと箸を指差す。
絵心の気分で罰をくらったAは“じゃあ”ってなんだと呆れた視線を向けて室内へ入った。
この自由さ、どっかの目隠しに似ている……昨日の電話もあってか、いつの間にかモニターを凝視している絵心さんを横目に箸を洗いながらそう思った。
あの後、結局帰り際に任務が追加されて明け方まで走り回され、伊地知さんの“これ見たことある発言”をすっかり忘れたまま別れてしまったAは少々苛立っていた。
頼まれてもいないのに湯呑みを取り出し、お湯を沸かしているのは、どうせならここの水道代とガス代にストレスぶつけてやるという魂胆である。
3つの湯呑みのうちひとつをちゃぶ台に置いたとき、ようやく帝襟さんがいないことに気がついた。てっきりセットのイメージがあって、ここにいるのだと思っていたのだが。
『絵心さん、帝襟さんは何処に?』
「アンリちゃんは自室でオンライン会議。さっき行ったばっかだけどすれ違わなかった?」
『いえ。てっきりここにいるものだと思ってました』
帝襟さんの部屋は私の部屋の隣なのだが、タイミングが合わず会えなかったようだ。癒しに会う機会を逃してしまうとは、ガッテムっっ!!!(※徹夜テンション込み)
『(……ブラックだな)』
(※徹夜テンションにより普段以上に考えが飛び飛び)
悲しくも似通ったものを感じてしまう1日のはじまり、はじまりー(※徹夜テrty…)
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時