7話 ページ8
依代を渡し終えた帰り、目の前には来た時と同じ"The 和"などでかい門。それを挟んで1人の女中が深く、深ァァく頭を下げていた。
「申し訳ありません!!!」
あまりの必死さに目を点にさせるA。
スマートフォンから聞こえる笑い声はこの際無視だ。
綺麗な2つの黒は女中の頸を映してぱちぱちと瞬いた。
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日本にある依代の保管場所は全部で5つ。
その内の3つは御三家が、残り2つは如月家が運営していて、任務によって保管場所が変わってくる。
今回は関東にある禅院の倉庫に預けることになったので、1時間ばかりの移動を経てやって来たのだ。
倉庫を出る直前、着信音が鳴る。
“五条悟”の表示に嫌な予感をしつつ、先に外に出た伊地知さんにハンドサインをしてそれを耳に当てた。
『嫌です』
《まだ僕何も言ってないよね??》
彼の息を吸う音で面倒くさいことだけは分かり、内容を聞く前に切ろうとすると、向こうも察したのか慌てて引き止められる。
《大事な話なんだ。》
一年に一回、あるかないかくらいに真剣な声。
『…なんですか、改まって。どうせ帰り際に追加の任務とか言うんでしょう?』
ちら、と窓の外を見る。新しい任務のメールでもきたのか、伊地知さんは両手で端末を持ってゆっくりスクロールしている。
その手が微かに震えて勢いよくこちらを振り返るのと、ガツンと鼓膜が揺れたのは同時だった。
《如月家当主が亡くなった。》
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時