6話 ページ7
騒々しかった足音もいつの間にか止んで妙な緊張感が漂う。
だがしかし、急展開すぎてついていけない。
予想の斜め上をいく出来事に暫く放心状態になる。
『……いや、え?』
「えっ」
『え?…や、なんで走ってたんかなって…』
たまたま近くにいたアホ毛の人と互いに「なんだこいつ」という顔をして、この場面に遭ったら誰でも思うだろう疑問を口にすると気まずそうに目を逸らされる。
アホ毛君筆頭とする彼らは絵心に己のエゴを煽られまくり、その衝動のままに飛び出してきたという背景があるが、そんなことは存ぜぬ考えつかぬなAは“一体何があったんだ”と2秒ほど遠い目をした。
『(まあ考えたってしゃーないか。
教えてくれる気配もないしスルーしよ)』
すぐに持ち直した。
『ぁー…初めまして、如月です。皆さんにはバスでブルーロックまで移動してもらいますんで、お好きな席にお座りくださーい。荷物はトランクルームにお願いします』
あとは着いてから説明される、と適当に切り上げて端による。
「Aちゃん」
『!絵心さん、プレゼンお疲れ様です』
「ん。ところでAちゃん、この後抜けるって言ってたけど何かあるの?」
その時、裏口から出てきた帝襟さんと目が合った。肩口で揺れる栗色に手を振り返して絵心さんに視線を戻す。
『少し警備のことで…。本部に行かなきゃならないので、遅くても20時になります』
ちらりと私を見た絵心さんは、それ以上特に何も言わず無表情で頷いた。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時