第四十三話 失踪 ページ46
『…っチーノ、チーノ！！』
ヘッドフォンのマイクに向かって何度も何度もその名前を叫ぶ。しかし、いつものあの明るく爽やかな秋風のような声は返って来ない。
rb「あの上級祭司…何か気づいとったんかも知れんな」
ロボロさんが悔しそうに下唇を噛み、歯の隙間からそう洩らす。突然のことに動きを止めてしまった鬱さんを横目に、ゾムさんとショッピさんは一番近くの本棚を2人がかりで倒して扉を塞いだ。
zm「この部屋の出入口はこのドア1ヶ所だけや。最初から閉じ込めるつもりやったんかもわからんな」
素早く辺りを見渡して逃げ道のルートを確認し始めたゾムさんが言う。ショッピさんも、扉の向こうに聞き耳を立てながら呟いた。
syp「何人かこっち来てますね…金具の音も聞こえるんで、武装してるかも。本棚重いんで暫く時間稼げるとは思うんすけど」
スッと体温が下がる感覚。頭の奥でどうしようという思いが渦巻き、遠く耳鳴りがする。
『チーノ、は…？』
カラカラに渇いた喉から言葉を絞り出す。その自分の声すら、どこか別の場所から発されているかのように思えた。
syp「こっちからも声が聞こえへん。捕まったんちゃうかな…くっそ、何かしら理由でもつけて部屋に連れ込むべきやった…」
ギリッと歯軋りをしたショッピさんが、細い声でロボロさんに言った。
syp「…帰投、します」
rb「……そうしてくれ」
燃えるような瞳で画面とにらめっこしているロボロさんが、腹を決めたように強く言った。
『チーノは…置いていくんですか』
掠れる声でそう訊けば、ロボロさんは数秒目を瞑ってから私に向き合った。
rb「そうや」
分かっているつもりなのに、口が勝手に動いてしまう。
『どうしてですか』
ロボロさんはグッと顔布を片手で握りしめ、私の目を見据えた。
rb「ええか？あいつがうちの幹部やって事は追々バレるはずや。そこにノコノコとゾムたちが突っ込んで行ってみ？あいつらが如何に戦闘に優れとるからと言って、あいつらは3人しか居らん。数は脅威や、ゾムたちまで捕まったらとんでもない人質を取られる事になる。それだけは避けたいねん」
淡々とした、胸にストンと落ちてくる薄氷色の声。知らず知らずの内に、私は拳を固く握っていた。
rb「心ないと思うか？殺伐とした国同士では、仕方のない事やねん。今は脱出が最優先や」
震える私を見て、ロボロさんは少しだけ頬を弛めた。
rb「かと言って見捨てる訳やない。Aくん、グルッペンに繋いでくれへん？」
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あくら、 - 久しぶりに夢小説読んだんですがゆうり様の作品最高すぎですね(*´꒳`*) (2022年6月1日 17時) (
レス) @page3 id: d4efbb01c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 楽しく読まさせていただきました。インクではないですが、洗剤で紙に文字を書き、乾燥させてから書いた紙を濡らすと文字が浮かび上がるそうですね。 (2022年4月8日 21時) (レス) id: 1e5fccc68e (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - 安らかに眠れwwとびらww (2021年1月10日 11時) (レス) id: e6d62c8537 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 毎回夢ちゃんの葛藤、そして皆からの愛情が伝わって胸きゅんが止まりません...これからも応援してます！ (2020年12月24日 12時) (レス) id: 3009402549 (このIDを非表示/違反報告)
しぇけなべいべ(プロフ) - 少し。ほんの少し。書き方変えましたか......??まぁ。それは置いといて。毎日更新ありがたいです.....!!!!! (2020年12月20日 23時) (レス) id: a746dec877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2020年12月7日 19時
