第三十六話 家族 ページ39
gr「なかなかに嬉しい事を言ってくれるな、少年」
『いえ、そんな』
私は、自分の脆弱さを知りながら、それから逃れるために優しいこの人たちに甘えているだけ。俯くと、グルッペンさんはフッと笑って私の頭に手を置いた。
gr「あのような軍事力的に見てそう強くない国など、潰すのは容易いだろうから調べようとは思っていなかったが…気になるか」
…そっか。勝てることがわかっていて、余計なところに金をかける必要性はないもんな。……だけど、私はここで引く訳にはいかない。真っ直ぐにグルッペンさんを見て応対する。
『はい、とても。それに、いずれ征服するとしても、薬に侵された地を受け入れたら我々国の国民も蝕まれるかも知れません。僭越ながら申し上げますと、憂いの芽は早期から摘んでおくべきかと』
キッパリとそう言えば、グルッペンさんは表情を崩して頷いた。
gr「では随意に。どうせ俺も心掛りではあったのだ。この際、折角ならとことん炙り出してやろうではないか」
『！ありがとう、ございます。感謝の念が絶えません』
ぴょこんとお辞儀をすると、グルッペンさんは手袋をはめた手で口許を押さえて笑いを堪えていた。何か変なことを言っただろうか？首を捻ると、グルッペンさんはすまんすまんと手を振った。
gr「Aは俺の前だといやに畏まるなと思ってな。もっとフランクに接してくれて構わないんだゾ」
『あ、いえそれは何と言うか…自然となってしまうと言いますか』
独りでに頭を垂れてしまうような、威圧感とも威厳とも取れない、グルッペンさんの不思議な魅力。この人を前にすると、私はいつでも変に礼儀正しさを意識してしまう。言い訳をする私に、グルッペンさんは明け透けな笑顔を向けてくれた。
gr「ああ、まあ強要はしない。だが、もっと近しく思ってくれて良いとだけは伝えておこう。お前はとっくに、我々の家族なのだから」
そのあたたかい日だまりのような言葉に、私は胸が詰まる思いになる。
『家族…ですか』
gr「そうだ。血の繋がりを家族と呼ぶのではない。そこに愛を持てるかどうかだからな。俺たちはお前を、とうに心から愛しているのだから」
トン、と心につかえていた何かが…刺さっていた釘が、取り去られたような気持ちだった。愛。愛？私に貰う権利はあるのだろうか。返せる器用さはあるだろうか。そう思えば思う程、嬉しさと困惑がごちゃ混ぜになって胸を覆った。瞬間、涙が溢れて制御しきれなくなり、すぐに視界が透明に歪んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 894人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あくら、 - 久しぶりに夢小説読んだんですがゆうり様の作品最高すぎですね(*´꒳`*) (2022年6月1日 17時) (
レス) @page3 id: d4efbb01c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 楽しく読まさせていただきました。インクではないですが、洗剤で紙に文字を書き、乾燥させてから書いた紙を濡らすと文字が浮かび上がるそうですね。 (2022年4月8日 21時) (レス) id: 1e5fccc68e (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - 安らかに眠れwwとびらww (2021年1月10日 11時) (レス) id: e6d62c8537 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 毎回夢ちゃんの葛藤、そして皆からの愛情が伝わって胸きゅんが止まりません...これからも応援してます！ (2020年12月24日 12時) (レス) id: 3009402549 (このIDを非表示/違反報告)
しぇけなべいべ(プロフ) - 少し。ほんの少し。書き方変えましたか......??まぁ。それは置いといて。毎日更新ありがたいです.....!!!!! (2020年12月20日 23時) (レス) id: a746dec877 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうり
| 作成日時：2020年12月7日 19時
