日暮れの鶴声 ページ26
zm「Aー！！ちっす！！！」
『……今日はもう来ないのかと思った』
zm「お、帰れって言わんのや」
ここのところずっと決まった返しだったAの反応がいつもと異なる事に、ゾムは若干の違和感を覚えながら宮に上がり込む。
zm「そんなに俺に来て欲しかったん？」
『冗談きついよ。毎回白昼だったのに、昼に来なければもう来ないんだなって思うでしょ』
zm「もー、照れ屋さんやなぁ」
『……ゾムとの会話って疲れると思う』
一向にまともな会話のキャッチボールが成り立たない事に溜め息をつき、Aは腰に刀を提げる。
zm「あれ、出掛けるん？」
『当たり前。今何時だと思ってるの』
zm「日暮れ時」
『…逢魔時ね。この時間帯は魑魅魍魎の力が強まるから、瘴気が強い辺境のここらを闊歩して見守るのが日課なんだよ』
と言うか、現在の主な仕事はこれだ。Aはぽかんとするゾムを放置して、さっさと暗くなりかけた街へと階段を下りて行く。
zm「パトロールするんやな！俺も着いてくわ！！」
『…心根が素直な者は、悪鬼どもに集られ易いし術にも掛けられ易いと知ってる？』
zm「そうなん？でもAと居れば問題無いやろ？」
『……勝手にすれば』
呆れた様にゾムを振り仰いだAは、階段を踏み外してバランスを崩す。
『おっと』
妙に冷静な感嘆詞を吐いたAの腕をすんでの所で捕まえて、ゾムがぐいと引き寄せる。
zm「…っぶな！！大丈夫か？てか『おっと』や無いわもっと焦れ！！」
『ごめん。ありがとう』
至って真顔で謝り礼をするAに、ゾムは口を尖らせて文句を言う。
zm「ほんま気を付けてや。怪我さしたら俺がひとらんに殺されるわ」
Aは少し考え込むと、ゾムの目を見据えて返した。
『…それは困る』
zm「んなっ！？」
こいつ、無意識にそういう事言っとるん？ゾムは近くなった顔にどぎまぎしながら、ずいと片手を差し出した。
zm「…また転けたら怖いやろ。手ぇ繋ごや」
『え』
zm「嫌なん？」
不安そうに伏し目がちなゾムが訊くと、Aは首を振る。
『別に』
その答えを聞いて、ゾムは嬉しそうに顔を輝かせてAの手を取り歩き出した。やや動きのぎこちなくなったAも、大人しくその後ろで足を動かす。
『…やっぱ調子狂う』
誰にも届かぬ声でもそりと言って下を向いたAの頬は、見た事が無い位に弛んでいた。並んで夕暮れの街を歩く二人。ゾムがその照れ顔を目の当たりにするのは、まだもう少し先の話になりそうだった。
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燐(プロフ) - もしかして烏妃さんがモデルですか?お話とても面白かったです！ (2021年2月4日 0時) (
レス) id: aa80ce7edc (このIDを非表示/違反報告)
犬キナ - あっチッス！犬きなこのべつあかっす！誤召喚お気に入りしてた、、、今回も神作品っすね！更新頑張ってください！ (2021年2月3日 23時) (レス) id: 48a9631c32 (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - 烏妃パロ？ (2021年2月3日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
なコ - ………あ、あぁ←。最高っすね！なんでこれまた神作品というものが出来んのか…(？？)設定が…もう、好き。更新頑張って下さいッす！ (2021年2月1日 16時) (レス) id: 5cc4ee344d (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - ｱｯ…(コメント失礼します。今作も好きすぎます、めっちゃ尊いです。鶴妃って…なにそれ好き…(2回目)。無理せず、更新頑張ってください！) (2021年1月31日 23時) (レス) id: 277b16b527 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年1月31日 23時
