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ht「最近、妙に楽しそうだね」
そう言ったひとらんらんに笑顔を向けられて、Aは困惑した様に眉根を寄せる。
『そう見える？兄さん、目腐ったんじゃないの』
ht「えぇー？辛辣だなぁ、見たままを言ってるのに」
『どっちかって言うと、閑静で至福の時だった白昼に来る男のせいで心がザワザワする』
ひとらんらんはおや、と目を見張ると、ふわっと微笑んだ。
ht「ゾムの事？律儀に毎日来るもんねぇ。結局毎回お茶出してまで話に付き合ってあげてるんだから、悪い気はしないんでしょ？」
『…どうかな。何だかイライラ…とはちょっと違うけど、変な気持ちになるから嫌だ』
ht「そっかぁ」
クスリと愉快そうにAの頭を撫でたひとらんらんは、ついとAを覗き込む。
ht「で、Aの目的の手掛かりはあったの？」
『……これっぽっちも』
ふるふると首を横に振ったAは、ふと寂しそうな色を浮かべて瞳を翳らせる。ひとらんらんはぽつんと小さく呟いた。
ht「しんぺい神てば、何処に行っちゃったんだろうね」
しんぺい神とは、「先代鶴妃」の名だ。Aは不貞腐れた様にそっぽを向く。
『先代は男だったのに、前王朝の我が儘に寄り添ってやってたんだ。羽根伸ばしたいんでしょ、きっと』
妃、と言う呼び名は、初代が女性だったが為に付けられた名だ。才能が有れば、男であろうと鶴妃の位に就く事も稀に見られる事例である。先代のしんぺい神は、ある日突然Aに鶴妃の座を受け渡し、フラリと何処かへ雲隠れしてしまった。彼を師匠として心から慕い、暮らしの支えにしてきたAにとって、それは胸にぽっかりと大穴を穿つ衝撃であった。
『何時かは戻って来てくれるよ、きっと。それに、先代は凄いから……私の近況だって、何かしらの手段で知ってるでしょ』
ht「…ん、そうだね。それに、もう近くに居るのは俺だけじゃ無いし」
『…ゾムは私の邪魔して愉悦に浸ってるだけ』
ht「じゃあそういう事にしとく」
ひとらんらんは優しくAの髪を撫で、そっとその肩を抱く。たった一人の、大切な乳兄妹。天真爛漫なゾムの過干渉は、少しずつだがAの虚構を埋めてくれている筈だ。鶴妃とは、素より人々と共に在る者。Aは、ひとらんらんの母の死を自分のせいだと言って譲らない。大きすぎる背負い物をしたままの彼女には、ゾムの様な外から手を差し伸べてくれる人物が入用だ。
ht「ちゃんと幸せになりな、ね」
小声の願いに、Aは真顔で首を傾げるだけだった。
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燐(プロフ) - もしかして烏妃さんがモデルですか?お話とても面白かったです！ (2021年2月4日 0時) (
レス) id: aa80ce7edc (このIDを非表示/違反報告)
犬キナ - あっチッス！犬きなこのべつあかっす！誤召喚お気に入りしてた、、、今回も神作品っすね！更新頑張ってください！ (2021年2月3日 23時) (レス) id: 48a9631c32 (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - 烏妃パロ？ (2021年2月3日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
なコ - ………あ、あぁ←。最高っすね！なんでこれまた神作品というものが出来んのか…(？？)設定が…もう、好き。更新頑張って下さいッす！ (2021年2月1日 16時) (レス) id: 5cc4ee344d (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - ｱｯ…(コメント失礼します。今作も好きすぎます、めっちゃ尊いです。鶴妃って…なにそれ好き…(2回目)。無理せず、更新頑張ってください！) (2021年1月31日 23時) (レス) id: 277b16b527 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年1月31日 23時
