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『それは、帥にとってみれば災難』
ポツリと呟いたAに、青年は声を荒げる。
「何だよぉ、その言い方！！あんた…鶴妃みたいなのにとっちゃ、そりゃこんなの他人事だろうけどさぁ、聞こうって言ったのはあんたじゃないか。もう少し何か無いのかよ！？」
Aはゆっくりと青年の手を振り払うと、そっとコネシマを抱え直した。以降誰も動かない重苦しい空気の中に、Aの透く様な声が鳴る。
『他人事？笑わせてくれるな。私だって、そう鈍間に生きてきた訳では無い。……帥の方は、まるで私の出自を知って居る様な口振り』
「知ってるさ、有名な話だろぉ？姫さんだって聞いたよぉ」
間延びした話し方のせいでイマイチ怒っているのかどうかの判別が付かない青年に目を向け、Aはこくりと頷いた。
『まあ、そう。この立場故、祖国に棲んで居った頃には何度も危うい目に逢った……考えれば解るであろう？暗殺の類い』
う、とトントンが目を見張る。異国の宮でもそんな事は起こるのか。
「…でもあんた、生きてるよな」
ぶっきらぼうに言う青年に、Aは何とも無さげに言い放った。
『それは、そう。私は……護られてしまったから。代償に、この世で一番大切だった人を失った』
「…は？」
『乳母。実の家族よりよっぽど愛情を注いでくれた、唯一私が尊敬してやまなかった人。……私が、殺した。私を庇ったりしたせいで、彼女は刺客に殺された』
Aは一度言葉を切ると、ちらりとコネシマを見てから続ける。
『…時に、帥は何故此奴の名声を落とす事に拘る？』
その静かな問いに、青年はもそもそ応答する。
「復讐だって、あんたにも判ってんだろぉ」
Aは青年を見据えると、キッパリ言いきった。
『判りはするが、解らない。帥が何もして居らぬ嫁を殺されたと言うのなら、帥が此奴に取り憑いてした事もそれと変わらないのだから。己が欲の為に罪無き民衆を数多く殺した帥は、戦争と言う大義名分を抱えた上での行動であった此奴よりも性質が悪い』
「っ！」
言うなれば、只の殺人鬼。絶句して口を押さえた青年に、Aは容赦無く音の雨を叩き付ける。
『帥は、哀れな咎人。だいたい、そんなに嫁が大事ならさっさと極楽に渡れば良かったではないか…きっと帥を待ちわびて居る』
「…うん」
だから、早く行ってやれ。そう言って懐から折鶴を取り出して青年に投げつける。ぼうっと光り出した青年の体は次第に揺らぎ、後には茫然とする幹部たちの吐息だけが残った。
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燐(プロフ) - もしかして烏妃さんがモデルですか?お話とても面白かったです！ (2021年2月4日 0時) (
レス) id: aa80ce7edc (このIDを非表示/違反報告)
犬キナ - あっチッス！犬きなこのべつあかっす！誤召喚お気に入りしてた、、、今回も神作品っすね！更新頑張ってください！ (2021年2月3日 23時) (レス) id: 48a9631c32 (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - 烏妃パロ？ (2021年2月3日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
なコ - ………あ、あぁ←。最高っすね！なんでこれまた神作品というものが出来んのか…(？？)設定が…もう、好き。更新頑張って下さいッす！ (2021年2月1日 16時) (レス) id: 5cc4ee344d (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - ｱｯ…(コメント失礼します。今作も好きすぎます、めっちゃ尊いです。鶴妃って…なにそれ好き…(2回目)。無理せず、更新頑張ってください！) (2021年1月31日 23時) (レス) id: 277b16b527 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年1月31日 23時
