エピローグ ページ48
「…お嬢」
トントン、と襖を叩く音がする。
『入れよ。とっくに準備は終わってるから』
「う、うん」
そう襖の向こうに投げ掛けると、やや吃りながらも了解したゾムがそっと入って来た。
「ほ、ほんまにええの…？」
『は？当たり前だろ。どうせ今後は一緒に寝る事になるんだから、布団並べるくらいは普通だろ』
「……そう？」
『おう』
チラリと私を確認する様に見上げて来るゾムに、頷いて隣り合わせの布団をはたいた。
『ほれ、来いよ』
「解った」
おずおずと横に来たゾムは、暫く張り詰めた顔をしていたものの、少し時間が経つと漸く嬉しそうに口許を緩めた。「もう、あの親と言い争わなくてもええんやな？」と言ってこてんと首を傾げたゾムは、何と言うかとてもあざとい。
『そうだな。代わりに、ずっと私の傍に居てくれよ？』
ニッと笑って言えば、ゾムは恥ずかしそうに俯きながら、こくりと一回頷いた。それからふと違和感に気が付いた私は、ゾムのフードを軽く引っ張りながら訊く。
『……お前、やっぱ私の前だとしても、フードは特別な時しか脱がないんだ？』
「あ……と、取った方がええ？」
『いや、別に。無理強いはしねぇけど、ちょっと残念だなってだけで』
「ざ、残念？」
不思議そうに尋ねるゾムにクスクスと笑いながら、私は布団の上に寝転がった。
『うん。お前の瞳、綺麗だから好きなんだよ。宝石みたいにキラキラしてて、見てると幸せな気持ちになる感じ』
「…幸せ」
噛み締める様に反芻したゾムは、長い事黙って私を見つめていたが、不意に思い立った様に立ち上がると私の方に寄って来た。そのまま馬乗りの様な姿勢になったゾムは、フードの影に隠れていても解るくらいに真っ直ぐな目でじっと私の顔を凝視する。
『おい、何のつもりだよ』
襲いたいってんなら、まだ早いぞ。籍を入れられる様になるのは、お前が十八になってからだろ。呆れてゾムを仰いで居ると、ゾムはぐいと私に頭を引き寄せた。
「俺は、お嬢の方が綺麗やと思うで」
『へ…』
重力に逆らえずにハラハラと私に被さる様に落ちてくるゾムの伸びた前髪が、頬を擽る。隠されていた翡翠の瞳が間近に見えたと思った瞬間、口を塞がれた。
『んぐっ！？』
長い長い、濃密なキス。振り払おうとしたが、接近しすぎたこの姿勢ではどうにも抗えない。
「んへへ…お嬢、可愛い」
ペロリと舌舐めずりしたそいつは……まるで、狼、の様な。重なる吐息に、“家族”を超えた「何か」を見た様な気がした。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
